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検察こぼれ話① ~配点~

2020.12.04ブログ

2020年12月4日   
弁護士 金 子 達 也   

 

1 事件が検察庁に送致されると,各事件を特定するための番号(検番)が決まり,捜査担当検事(主任検事)を指名されます。
  これを「配点」と言います。
  送致された事件の配点は,千葉地検のように比較的規模が大きな検察庁(部制庁と呼ばれています)では刑事部長又は刑事部副部長が行い,小規模な検察庁では次席検事が行うことになっています。
  検察庁では,この刑事部長や次席検事のことを,決裁官とも呼んでいました。
  筆者も,東京地検公安部麻薬係副部長,宇都宮地検次席検事,福岡地検刑事部長の時代に,決裁官として「配点」を行っていました。

2 決裁官が事件を「配点」する検察官を間違えると,捜査が締め切りに間に合わないといった困った事態を招きかねず,自分の首を絞めることにもなりかねません。
  特に身柄事件(警察が被疑者を逮捕し,その身柄を拘束したままで送致される事件)の場合,検察官には刑事訴訟法で許される期間内に必要な捜査を遂げて起訴・不起訴の判断をすることが求められていますので,格別の注意が必要でした。
  身柄事件を「配点」をする場合には,決められた期間内に的確に捜査を遂げてくれる(締め切りを守ってくれる)検察官に,事件を「配点」する必要があったのです。
  とはいえ,検察官の能力も様々であり,困難な事件を安心して任せられる検察官もいれば,ちょっと疑問符がついてしまう検察官もいたので,決裁官は,それらの検察官を適材適所で使っていかなければならなかったのです。
  そのためには,事前に事件記録を読み込んで,各事件の問題点や難易度を把握した上で,検察官の能力や繁忙度などを見ながら,事件と検察官の個性に合わせた的確な「配点」をする必要がありました。
  他方,身柄事件には上記時間的制約があるため,決裁官が,のんびり時間をかけて「配点」を決める余裕などなく,遅くとも事件が配点された日のうちに「配点」を決めることが求められていました。
  地方の実情にもよりますが,警察からの身柄事件の送致はだいたい午前中にあったので,結局,多くの決裁官は,毎日午前中は,この「配点」事務に時間を取られていました。
  そのため,決裁官によっては,この「配点」事務が終わるまで自室のドアを閉め切り,緊急時以外は入室を禁じている人もいました。

3 これは,部下である検察官にとってみれば,小言を言う決裁官が午前中は「配点」に忙殺されていることを意味しており,午前中は,決裁官から呼び出されることはないという安心感にもつながりました。
  そのため,筆者が若い頃には,若手検察官は,午前中は比較的のんびりと(コーヒーでも飲みながら)過ごしており,ひとり決裁官だけが送致記録に埋もれて奮闘する,,,そんな雰囲気の中で,検察庁の1日が始まっていたのでした。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★