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英米刑事法論文紹介②『ストーリー・フレーミング』スティーヴン・ルベット著

2020.12.02ブログ

『ストーリー・フレーミング』スティーヴン・ルベット著

Steven Lubet, “Story Framing,” Temple Law Review 74, no. 1 (Spring 2001): 59-68

 

 本論文は、アメリカの著名な法学者/著作家であるスティーヴン・ルベットが、刑事弁護における「ストーリー・フレーミング」の重要性についてまとめたものです。

 ルベットによれば、「ストーリー・フレーム」とは、「想像や洞察という行為を構成するものであり、事実認定者が証拠により描写された状況の中で、何が起きたかを決定する際の文脈」と定義されています。

 具体例の1つとして、O・Jシンプソンの裁判が取り上げられており、検察側の「ストーリー・フレーム」が「ドメスティックバイオレンス」、弁護側が「警察の偏見」であったとされています。

 すべての事実を説明する完全な証拠関係が原理的に存在しえない刑事裁判の事実認定においては、証拠によって直接裏付けられる不完全な事実関係の「隙間」が必然的に存在することになります。刑事裁判実務では、そうした「隙間」は事実認定者の推認や想像によって補われることになりますが、ルベットは、その過程において事実認定者固有の知識や経験が強い影響を持つことに注意を喚起しています。「ストーリー・フレーミング」は、事実認定者の知識や経験に左右されやすい事実認定の推認過程に影響を与えるためのツールとして位置づけられます。

 また、「ストーリー・フレーミング」の重要性について、ルベットは、「ケース・セオリー」や「テーマ」といった日本の刑事弁護実務にも浸透している概念と比較して、法廷弁護においてより効果的なツールとなり得ることを示唆しています。

 

弁護士 中井淳一

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★