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執行猶予中に交通違反をしてしまいました。執行猶予は取り消されてしまうのでしょうか?

よくあるご質問刑事事件

1.執行猶予制度というのは,禁錮刑や懲役刑などの刑の言い渡しを受けた後,裁判所が定めた一定 期間(1年~5年)は刑の執行を猶予し,その間に再び犯罪を犯さなければ,刑の言い渡しの効力が失われる制度です(刑法25条,刑法27条)。
 執行猶予制度のおかげで,その期間内に犯罪を犯さず無事に過ごせば刑務所に行かされることはないのですが,反面,執行猶予期間中に再び犯罪を犯してしまった場合には,刑務所に収容される危険が相当高くなります。
 この点について,刑法は,「執行猶予の期間内に再び罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ,その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。」には,執行猶予の言渡しを取り消さなければならないと定めています(刑法26条1項1号。執行猶予の必要的取消し)。
 つまり,執行猶予中に再び犯した犯罪で禁錮刑又は懲役刑が言い渡され,執行猶予とはならなかった場合には,その刑が確定して収監された時点で確実に執行猶予が取り消されてしまうことになります(この場合,新たに言い渡された刑だけではなく,執行猶予が取り消された刑も併せて服役しなければなりません。)。
 一方,刑法は,「猶予の期間内に更に犯罪を犯し,罰金に処せられたとき。」にも,猶予の言渡しを取り消すことができると定めています(執行猶予の裁量的取消し。刑法26条の2-1項1号)。
 つまり,執行猶予中に再び犯した犯罪で言い渡された刑が罰金刑であっても,執行猶予が取り消される危険はあるのです。しかし,実務の運用として,罰金刑で執行猶予まで取り消されたという事例はほとんどありません。
 ですから,執行猶予中に交通違反をしてしまった場合に,執行猶予が取り消されるかどうかの分かれ目は,再び犯した犯罪で禁錮刑又は懲役刑の実刑判決が言い渡されるかどうかにかかっているわけです。
2.もう一つ注意しなければいけないのは,執行猶予期間に禁錮又は懲役に当たる犯罪を犯して起訴された場合には,再度の執行猶予を勝ち取るのがとても難しいということです。
 この点について,刑法は、執行猶予中に犯罪を犯した者に対しては,1年以下の禁錮刑又は懲役刑を言い渡す場合でなければ,再度,刑の執行を猶予することはできない旨定めています(刑法25条2項)。
 つまり,執行猶予期間中に禁錮刑又は懲役刑に当たる犯罪を犯して起訴された場合には,裁判所が1年以下の禁錮刑又は懲役刑を言い渡した場合でなければ執行猶予とはなりませんが,そのような判決を得ることは非常に難しいと言われています。
 ですから,執行猶予中に交通違反を起こしてしまった場合,罰金で済まされるのか,それとも起訴(公判請求)されて禁錮刑や懲役刑を言い渡されるのかによって,執行猶予が取り消される危険の程度には格段の差があるということになるのです。
3.一方,交通違反は,軽微なものであれば,交通反則通告制度により反則金を納めれば事件が終了し(一般に青切符と言われている処理になります。),前科としてもカウントされないため,執行猶予が取り消される危険はまったくありません。
 また,例えば酒気帯び運転や無免許運転などの比較的悪質とされている事案であっても,罰金で処理してもらえれば(一般に赤切符と言われているものです。),実務上,執行猶予が取り消されるリスクはほとんど無いと言って良いと思われます。

4.問題は,交通違反であっても,罰金では済まず,起訴(公判請求)されてしまう場合があり,その場合には慎重な対応が必要であるということです。
 例えば,①交通違反だけではなく人身事故まで起こしてしまった場合や,②交通違反により事故を起こしその場を離れてしまった場合(ひき逃げ等の罪を問われることになります。)には,罰金で済まされず,起訴されて禁錮刑や懲役刑を言い渡される危険が高くなります。
 特に昨今,酒気帯び運転に対する取締姿勢は非常に厳しくなっており,酒気帯び運転で物損事故を起こした場合には,たとえ初めての違反であっても,罰金では済まされず,問答無用で起訴されてしまう危険があるので,注意が必要です。
 さらに,事故を起こしていなくても,例えば,無免許運転などの同じ交通違反で複数回検挙され,既に罰金も何度か納めた経験もある場合は,常習性があるとみなされ,起訴されて懲役刑を言い渡されてしまう危険が非常に高くなりますので,注意が必要です。

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★