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道路に飛び出してきた子供に車をぶつける交通事故を起こしました。子供は軽傷のようでしたし,道路も渋滞していたので,少し離れたコンビニの駐車場に車を止めてから事故現場に戻ると,警察官から「ひき逃げ」と言われてしまいました。私はどうすれば良かったのでしょう?

よくあるご質問刑事事件

1.交通事故が起こった場合,事故に関係した自動車の運転者は,「直ちに車両等の運転を停止」し,「負傷者を救護」し,「道路における危険を防止する等必要な措置」を講じなければならない義務があります(道路交通法72条前段)。
 そして,「交通事故による死者や負傷者がいた場合」に,これらの義務に違反した運転者に対しては,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科す(同法117条1項)こととされており,従来はこれが「ひき逃げ」に対する罰則規定でした。
 もっとも,平成19年の法改正によりひき逃げに対する罰則が強化され,「運転者の運転に起因して人が死亡・負傷した交通事故であった場合」には,上記義務に違反した運転者に対し,10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される規定(同法117条2項)が新設されました。
 なお,この「運転者の運転に起因して」という言葉の意味については,運転者の運転が原因であれば足り,運転者に過失がある場合に限定されないとされています。
 つまり,たとえ事故の原因が子供の飛び出し(通常は,運転者に過失は認められません。)であっても,ひき逃げと認定され,10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される危険があるのです。
2.一方,交通事故が起こった場合,事故に関係した自動車の運転者は,交通事故が発生した日時及び場所,死傷者の数や負傷の程度,損壊した物やその程度等を,事故処理をする警察官や,最寄りの警察署(交番)に報告しなければならない義務もあります(道路交通法72条後段)。
 そして,これらの義務に違反した運転者に対しては,3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科されます(同法119条1項10号)。
 この義務は,人が死傷した場合に限定されていないので,たとえ物損事故であっても,報告義務があることに注意が必要です。
3.道路交通法が,「ひき逃げ」に対し厳しい罰則を定めているのは,交通事故,殊に死傷者がいるような交通事故が起こった場合に,その救護(具体的には救急車を呼ぶなど。)や危険防止措置(具体的には事故車両・死傷者を道路上から安全な場所に移動させるなど。)が速やかに行われなければ,後続車による第2の事故が誘発される危険が高いことから,第2の事故を防止するために,運転者に上記義務を科し,この義務を守らなかった者には罰則を科すようにしたためであると考えられています。
4.さて,質問者の場合,交通事故の原因は子供の飛び出しで過失はなかったものの,質問者の運転が事故の原因であったことは明らかですから,本来は,直ちに自動車の運転を停止し,救急車を呼んで,子供を安全な歩道に移動させるなどの措置をするとともに,110番通報をして警察官に事故処理をお願いすべきだったと思われます。
 道路が渋滞しており,その場に自動車を止めたのでは迷惑がかかるという質問者の配慮も理解できますが,反面,質問者が上記措置をせず,子供が後続車にひかれて大けがをしてしまった危険が否定できないことを考えると,駐車場まで自動車を移動させた質問者の行動は,不適切でした。
5.なお,交通事故を起こした場合には,自動車の修理代金や,負傷等した場合の治療費等を保険会社に請求するのが通常と思われます。
 その場合には自動車安全センターが発行する「交通事故証明書」が必要になりますが,この証明書は,事故処理に当たった警察官の報告を元に作られるものです。
 ですから,交通事故後の保険請求をスムーズに行うためにも,交通事故を起こした場合は,まず車を止め,安全を確認し,警察に通報することをお勧めします。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★