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証拠の一覧表交付制度が刑事弁護実務へ与える影響②

2017.08.27ブログ

 証拠の一覧表の交付を受けることにより,「検察官の保管する証拠」の一覧を弁護人が把握することが可能になりました。
しかし,現在の証拠の一覧表については,次のような問題があります。

1 証拠の「標目」から証拠の内容が分からない場合がある
 証拠の一覧表の「標目」には,証拠書類そのものの表題が記載されます。したがって,もともとが「捜査報告書」という表題の証拠については,「捜査報告書」と記載されるだけです。どのような捜査をした結果が記載された証拠書類なのか表題からは不明です。通常は,作成年月日や作成者(警察官)の氏名をみても,証拠の内容が分かりません。
 他方,捜査報告書でも,「捜査報告書(犯人が着用していた帽子の流通経路等)」と記載されていれば,犯人性判断に関係する帽子の流通量・流通経路・販売先等を調査した証拠だと分かります。
 実務運用として,捜査報告書とだけ記載するのではなく,その内容が分かる表題にすることが望ましいと思われます。

2 証拠の一覧表に記載されていない証拠がある
 証拠の一覧表に記載されるのは,あくまでその時点で「検察官の保管する証拠」です。 例えば,最決平成20年9月30日(最高裁判所刑事判例集62巻8号2753頁)では証拠開示の対象となり得るとされた「本件犯行の捜査の過程で作成され,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なもの」であっても,一覧表には記載されません。
 また,放火事案であれば,消防署も現場検証や火災原因の調査を実施して報告書にまとめますが,検察官がこれを入手していれば,一覧表に載りますが,入手していない場合もあり,そうすると当然一覧表に掲載されません。
 証拠開示の対象となる証拠の範囲と一覧表に記載される「検察官の保管する証拠」が異なることは理解しておかないといけません。

3 紙媒体でしか交付されない
 現在,検察官から,証拠の一覧表は,印刷した紙を交付されます。
 証拠の点数が多い事件ですと,証拠の一覧表の枚数は膨大になります。(3000点程度の証拠書類がある場合,証拠書類の頁だけでも,150頁程度の一覧表になります。)
 そして,証拠の一覧表は,基本的には検察官に送致された順番どおり証拠が記載されています。例えば,甲野太郎さんの供述調書8通が,3頁と12頁と15頁と23頁と45頁と・・・というようにばらばらに記載されています。
 おそらく,検察官は,エクセル等で整理したものを印刷していると思われますが,紙媒体では,検索等が容易でなく,関係する証拠の確認をしようと思うと弁護人の確認作業が大変です。
 データの交付をしない運用は,検察庁の全国的運用なのですが,この点も今後の改善が期待されるところです。

平成29年8月   
弁護士 菅 野  亮