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犯罪白書を読んでみよう③ ~女性犯罪者の実態と処遇(その1)~

2026.09.22ブログ

2026年9月  

弁護士 金 子 達 也

 

1 はじめに

 今の時代に「女性は・・・」などと論じるのはいささか古くさいとも感じますが、令和6(2024)年版犯罪白書(以下、「R6白書」といいます。)では「女性犯罪者の実態と処遇」という特集が組まれています。

 実際、国の施策としてみた場合、女性犯罪者に関しては、平成24(2012)年犯罪対策閣僚会議決定の「再犯防止に向けた総合対策」において、女性特有の問題に着目した指導及び支援を強化することが重点施策の1つとして掲げられていたほか、平成29(2017)年閣議決定の「再犯防止推進計画」においては、犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等のための取組として、女性の抱える問題に応じた指導等を行うこととされ、続く令和5(2023)年3月17日閣議決定の「第二次再犯防止推進計画」においても、女性受刑者等の困難に応じた指導・支援のほか、矯正施設在所中から関係機関等と連携した切れ目のない社会復帰支援等を行うことが求められています。

 また、過去の犯罪白書でも、平成4(1992)年度版では「女子と犯罪」という特集が、平成25(2013)年度版では「女子の犯罪・非行」という特集が組まれていました。

 したがって、女性犯罪者の実態を把握し、それに応じた効果的な再犯防止施策を考えていくことは、犯罪の予防・鎮圧に向けた重要な施策の1つと理解されているように思えます。

 R6白書では、女性を取り巻く社会状況等(第2章)、女性による犯罪の動向等(第3章)、女性犯罪者の処遇・支援(第4章)が概括的に分析された後、法務総合研究所が女性犯罪者に対する適切かつ効果的なアセスメントや指導・支援のあり方の検討に役立つ基礎資料の提供を目的として実施した「特別調査(第5章)」の結果が紹介され、最後に、女性受刑者等の困難に応じた処遇・支援の在り方が考察されています(第6章)。

  その全部を解説することは分量的に難しいので、今回は、この「考察」部分を紹介しつつ解説していきたいと思います。

 

2 女性を取り巻く社会状況等について

 R6白書の特集では、第6章の冒頭で「女性を取り巻く社会状況等」をテーマに挙げており、「平成23(2011)年以降、日本の総人口が減少していくなか、65歳以上の人口は男女共に概ね増加し高齢化が進んでいる。高齢者の家族形態別構成比では、単独世帯及び夫婦のみ世帯の者は増加傾向にあるが、子との同居世帯は低下傾向にある。」、「女性はいずれの年齢層においても男性よりも就業率が低く、雇用形態別構成比では、女性の『正規』が40%台であるのに対し、男性の『正規』が70~80%台を占めており、女性の就業状況は男性と比べて不安定であることがうかがえた。」、「配偶者・交際相手からの暴力被害経験の有無では、身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要のいずれについても、女性は、被害経験があると答えた者の構成比が男性よりも高い。」などとまとめられています。

 私が大学で学んだ昭和の時代には、「女性」は、「高齢者」や「子ども」と同じ社会的弱者として捉えられてきましたが、R6白書の特集では、そう捉えなければならない状況は今も変わっていないことが最初に確認されています。

 つまり、女性受刑者等の処遇や再犯防止支援を考えるに当たっては、女性が今なお社会的弱者であり、かつ、高齢化・核家族化の影響で社会的に孤立しかねない状況にも置かれていることを念頭に置く必要があるという方向性が、最初に示されているとも言えるわけです。

 

3 女性による犯罪の動向等について

(1)検挙

 R6犯罪白書の特集では、「女性の刑法犯及び特別法犯の検挙人員総数は、一貫して男性よりも少ない」とした上で、「刑法犯及び特別法犯の検挙人員総数に占める『窃盗』の検挙人員の比率は女性の方が男性よりも高く、その手口としては『万引』が窃盗の検挙人員の75%以上を占めている(男性の場合、『万引』は窃盗の検挙人員の5割程度にとどまっている。)。」、「女性による万引の微罪処分率は一貫して男性よりも高い。」などと分析されています。

 私が大学生であった昭和の時代にも、女性が犯す典型的犯罪として「万引」が挙げられていましたが、その傾向は今も変わっていないことがわかります。

 また、私が大学生であった昭和の時代には、「警察官が『騎士道精神』を発揮して、同じ犯罪者でも女性に対しては甘い処分で終わらせる傾向がある。」と教わった記憶があるのですが、理由はともかく、今も、同じ万引犯であっても女性の方が微罪処分(不送致処分)とされ、刑事処罰が回避される割合が多いこともわかります。

 なお、R6犯罪白書の特集では、万引同様に女性が犯す典型的犯罪とされてきた薬物事犯に関し、「女性による『覚醒剤取締法違反』の検挙人員は、平成7年以降、全薬物事犯の検挙人員の5割以上を占めており、男性と比べて覚醒剤取締法違反が大きな割合を占めている」とも分析されています。

(2) 検察

 R6犯罪白書の特集では、「過失運転致傷等及び道交法違反を除く起訴人員(平成16(2004)年以降)は一貫して女性が男性より少ない。このうち窃盗及び覚醒剤取締法違反の起訴人員は一貫して女性が男性より少なく、他方で窃盗及び覚醒剤取締法違反の起訴猶予率は一貫して女性が男性よりも高い。女性は男性よりも起訴に至らず刑事手続を終えることが比較的多い傾向が認められる。」などと分析されています。

 このように、検察が起訴・不起訴を決める場面でも、女性に対し、刑事処罰を回避しようとする傾向があることが、統計上の数字として出ていることがわかります。

 

 R6白書の特集はまだ続きますが、続きは「その2」で紹介します。

 

(関連記事)犯罪白書を読んでみよう② ~戦後日本の刑法犯検挙率の推移~

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★