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千葉県千葉市の弁護士事務所 法律事務所シリウス > お知らせ・スタッフブログ > よくあるご質問 > 刑事事件 > 窃盗罪(侵入盗)で現行犯逮捕されました(逮捕された事実は認めています。)。 刑事から,身に覚えがない別の侵入盗事件(以下,「余罪事件」といいます。)まで私の仕業と疑われ,「否定するなら,余罪事件で再逮捕する。」と言われています。どうしたらいいのでしょうか?

窃盗罪(侵入盗)で現行犯逮捕されました(逮捕された事実は認めています。)。 刑事から,身に覚えがない別の侵入盗事件(以下,「余罪事件」といいます。)まで私の仕業と疑われ,「否定するなら,余罪事件で再逮捕する。」と言われています。どうしたらいいのでしょうか?

よくあるご質問刑事事件

1 刑事訴訟法(以下,「刑訴法」といいます。)は,捜査機関(警察及び検察)に対し,捜査のために被疑者を逮捕・勾留できる期間を制限しており,その期間内(最長で原則23日以内)に起訴しなかった場合,直ちに被疑者を釈放しなければならないと定めています(刑訴法203条~205条,208条等)。
  また,逮捕・勾留の効力はその基礎となった犯罪事実についてのみ及ぶのが原則とされており(事件単位の原則),同一の犯罪事実についての逮捕・勾留は1回しか許されないのが原則です(一罪一逮捕一勾留の原則)。
  これらの刑訴法の規定や原則は,身柄拘束できる要件を明確にし,犯罪事実ごとの厳格な判断を裁判所に求めることによって,捜査機関による逮捕の蒸し返しを防ぎ,被疑者の権利を守るためにあるものです。
  ところが,時として捜査機関は,これらの規定や原則を逆手にとり,再逮捕を繰り返そうとすることがあります。
  「別の犯罪事実であれば,何度逮捕を繰り返しても構わない。」という安易な発想で,同じ人物への逮捕・勾留が繰り返される危険があることは,残念ながら否定できないのです。

2 ご質問にある窃盗罪(侵入盗)の事案は,このような再逮捕が繰り返される危険が高い典型的なケースと言えます。
  侵入盗などの窃盗事案は,特定の犯人によって連続的(常習的)に敢行されることが多い犯罪類型とされています(そのため,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3条は,常習累犯窃盗罪という犯罪類型を定め,通常の窃盗罪より重く処罰するとしています。)。
  また,侵入盗などの窃盗事案は各地で頻発しており,犯人検挙に至っていない未解決事案も比較的多いことから,警察には,これらの未解決事案を速やかに解決して真犯人を処罰することが強く求められています。
  一方,侵入盗などの窃盗事案に対する有効な捜査手法として,事件現場に残された指紋や遺留品の特徴を別事件で検挙した人物の指紋や所持品と照合して犯人を割り出す手法(遺留品捜査)や,事件現場の痕跡等から推認される犯行手口を分析して類似の手口を使う犯人を割り出す手法(手口捜査)が,広く採られています。
  そのため,窃盗事案の捜査を担当する警察官は,質問者のように窃盗事案(侵入盗)で現行犯逮捕した被疑者を手中に収めた場合,更に未解決の窃盗事案も芋づる式に解決できないかと期待し,その所持品や手口を分析した上で,手口等が類似する余罪事件の犯人であるとの疑いをかけて,余罪事件の自白を迫る傾向にあるのです。
  それが適正捜査の結果としての「真犯人」に対する疑いであればまだしも,時として警察官の勇み足によって,相談者のように,身に覚えのない余罪事件の犯人であるとの疑いをかけられ,再逮捕の危険にさらされてしまう場合があるわけです。

3 さて,そのような状況に置かれた場合,どのように対処すれば良いのかは,事案ごとに慎重に判断する必要がありますから,一概にお答えできるものではありません。
  しかしながら,これからお話しするような理由から,とりあえずは,余罪事件に関する取調べには一切応じないことをお勧めします(なお,具体的な対応としては,基本的には,①現行犯逮捕された窃盗事件の取調べの最中に余罪事件に関する話題が持ち出された場合は,余罪事件について黙秘権を行使することができ,②現行犯逮捕された窃盗事件の取調べとは無関係に余罪事件そのものに関する取調べが始まった場合は,取調自体を拒否する旨を告げて(余罪取調べに応じる法的義務はありません。),直ちに取調室を出て舎房に戻りたいと求めることもできます。どのような場面でどのような対応をすれば効果的かは,弁護士が,事案等を的確に把握した上で,個別に助言することとなります。)。
  すなわち,警察官が「再逮捕」を匂わす真意については,①かなり信頼度の高い証拠(例えば余罪事件の現場に相談者の指紋が残されていた等)があり,警察官が本気で再逮捕を予定している場合と,②手口がなんとなく「似ている」事件があり,警察官が「あわよくば」自白を得たいと期待しているに過ぎない場合が想定されるのですが,残念ながら証拠は全て捜査機関の手中に握られていることから,捜査段階において,上記①,②のいずれであるかを正しく見極めることはとても困難です。
  そして,仮に上記①であった場合には,警察官の予告通り再逮捕されてしまう危険は高いのですが,その危険は,余罪事件の取調べに応じようが応じまいが同じことです。
  他方,仮に上記②であった場合,警察官は取調べのプロですから,巧みな話術で不利益供述を引き出され,虚偽自白まで誘導されてしまう危険が無いとは言えません。
  むしろ,上記②であった場合は,余罪事件に関する取調べに一切応じなければ,証拠(自白)がそろわず,再逮捕されないことも十分期待できます。
  そのため,時として警察官は,「余罪事件を自白すれば再逮捕はしない。」という趣旨の持ちかけで,余罪事件の自白を迫ってくることもありますが,捜査機関の手中にある証拠を確認できていない以上,その持ち掛けに安易に応じることはとても危険です。
  これらの起こり得る事態をみた場合,とりあえずは,余罪事件に関する取調べには一切応じず,黙秘をするか取調べ自体を拒否した上で,警察官の出方を見つつ対応を修正していくのが得策と言えるわけです。

  法律事務所シリウスの弁護士は,この種の刑事事件にも精通しています。
  臨機応変で的確な助言を行うことができますので,是非,ご相談ください。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★