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結婚式を行う予定でしたが,新型コロナウィルスの関係で,キャンセルすることに決めました。 また,その後行く予定だった海外旅行についても,旅行先への渡航中止勧告が出されてしまったため,行くことができなくなりました。 いずれも,キャンセル料を支払わなければいけないでしょうか。

よくあるご質問コロナウィルス感染症

1 契約内容を確認

 新型コロナウィルスの関係で,イベント等が中止されるケースが増えています。
 この場合にキャンセルが可能か,キャンセル料が発生するかどうかは,基本的には,個別の契約内容によることになります。
 そのため,まずは,契約段階で結婚式場や旅行会社と取り交わした契約書や約款等を確認することが重要です。

2 契約が履行不能であるといえる場合

 民法の規律によれば,契約当事者双方に責任がない事由で,イベントを行うことが不可能になった場合,債権者(顧客側)は,代金の支払いを拒み,契約を解除することができます(民法536条1項,542条1項)。
 この規定は令和2年4月1日に施行された改正民法の規定ですが,同日より前に契約が締結されている場合は,旧民法が適用されます。
 旧民法の場合,債務者(事業者側)は,顧客から支払いを受ける権利を有しないとされていますので(旧民法536条1項),結論は改正民法と異なりません。
 そのため,契約上はキャンセルできない,あるいはキャンセル料の支払いが必要,とされていても,民法の規律を根拠として,契約を解除することが考えられます(なお,契約のキャンセルによって,原状回復義務が生じ(民法545条1項),一定の精算に応じなければならない可能性はあります。)。
 
 結婚式の例でいえば,新型コロナウィルスの流行によって結婚式場が営業を停止しており,結婚式を開催できない,というようなケースでは,結婚式の開催が不可能,という余地があると思われますが,個別のケース毎に,解除の時期等もふまえた慎重な判断が必要といえます。
 海外旅行についても,旅行先への渡航中止勧告が出ている場合には,旅行に行くことが不可能として,履行不能を理由に契約を解除することが可能な場合があるものと思われます。

 

3 平均的損害額を超えるキャンセル料の場合

 上記のように契約が履行不能といえず,あくまで顧客側の自己都合によるキャンセルと扱われ,契約内容にキャンセル料の定めがある場合でも,キャンセル料の全部又は一部,すなわち結婚式場側に発生する「平均的な損害額を超える部分」について,支払いを免れることができる場合があります(消費者契約法9条1号)。

 「平均的な損害額」とは,契約をキャンセルした理由や時期によって,事業者側に生じる損害額の平均値,とされ,業種等によっても異なります。
 この平均的な損害額には逸失利益(契約が履行されていれば得られたであろう利益)も含まれるとする裁判例もありますし(京都地判平成26年8月7日判時2242号107頁),どの時点でのキャンセルかにもよるところですが,不当に高額なキャンセル料がかかるような場合には,高額な部分の限度で,キャンセル料の支払いを免れられる可能性があります。

4 顧客に不利益な定型約款の条項にあたる場合
 
 契約において,定型約款(定型取引において利用される約款)が用いられている場合,相手方の権利を制限し,義務を加重する条項で,相手方の利益を一方的に害すると認められるようなものについては,合意がなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。
 この規定は,改正民法で新設された規定ですので,令和2年4月1日以降の契約のみに適用されるものです。
 信義則や公序良俗といった民法の一般原則に反するような不当な条項といえる必要があり,ハードルは低くないといえますが,約款を用いて取引をする場合で,不当に過大な違約金等が定められていれば,顧客の利益を一方的に害するものと主張することもありうると思われます。

 そもそも,契約時に想定していない新型コロナウィルスの問題で,結婚式や旅行を取りやめざるを得ないことを理由として,キャンセル料を発生させないための交渉を行うこともあり得ます。
 まずは,契約内容等の確認が必要ですが,それぞれのケースによって,結論が変わりうるところですので,お困りの場合は弁護士にご相談ください。

以上

 

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★