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個人再生手続の利用を考えています。現在の負債額は,約350万円です。親族から借りた100万円だけを最近弁済したのですが,手続上,問題になるでしょうか。

よくあるご質問個人の債務整理・再生・破産

 個人再生手続では,破産事件や通常の再生事件のような偏頗弁済に対する否認権行使に関する規定がありません(破産事件であれば,支払不能となった後の偏頗弁済について破産法162条による否認権行使があり得ます。)。
 したがって,個人再生手続において,否認権行使が直接問題となることはありません。
 しかし,破産手続において否認権が行使されることを回避する目的で個人再生手続が申し立てられた場合には,不当な目的で再生手続開始の申立てをしたものとして申立てが棄却される可能性があります(『個人再生の手引〔第2版〕』142頁)。
 また,個人再生手続では,清算価値保障原則といって,再生手続の弁済額が,破産手続を利用した場合の配当率以上でなければならないというルールがあります(民事再生法174条2項4号が,この清算価値保障原則を定めていると解されています。)。
 否認権行使の対象行為がある場合,否認権行使をした場合に返還されると考えられる金額を取り戻したと仮定した財産額を前提として,清算価値を評価し,弁済率を定めることとしている裁判所が多いように思われます(『個人再生の手引〔第2版〕』249頁)。
 ご相談のケースでは,親族に対する弁済という問題がなければ,弁済総額100万円を3年間で分割弁済していくことなります。しかし,親族への弁済が否認権行使されるべき偏頗弁済だとされる場合には,偏頗弁済した100万円を取り戻したとして,清算価値を算定することになるため,再生計画における弁済額が,増えてしまう可能性があります(例えば,偏頗弁済額が100万円,預貯金が20万円,保険の解約返戻金が30万円あった場合,トータル150万円となり,再生計画で定める弁済額の総額は150万円を超える金額にしなければなりません。)。
 弁済額が増えれば,履行可能性があるのかといった要件にも影響してきますので,申立前にその点を十分に検討しておく必要があります。

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★