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アンナチュラル?な法医学の話③(異状死と変死)

2018.10.29ブログ

 ドラマ「アンナチュラル」で法医学者三澄ミコトが扱う異状死(unnatural death)について,医師法21条は,「医師は,死体又は妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と規定しています。
 つまり,異状死体というのは,「死体を検案した医師が警察に届け出なければならない死体」であり,通報を受けた警察が犯罪死であるとの疑いをもてば,犯罪捜査が開始される可能性も出てきます。

 これに似て非なる,「変死」という言葉があります。
 刑事訴訟法229条は,「変死者又は変死の疑いのある死体があるときは,その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は,検視をしなければならない」と規定しています。
 つまり,変死者又は変死の変死の疑いのある死体(変死体と総称されます)というのは,「検察官が検視(死体の状況を調べること)をしなければいけない死体」であり,検視の結果,犯罪による死亡との疑いが強まれば,犯罪捜査が開始されることとなります。

 このように,異状死も変死も,通報や検視の結果として,犯罪捜査が開始される可能性があるという意味では,同じく「捜査の端緒(きっかけ)」となり得るものと理解できます(厳密に言えば,異状死の通報を受けた場合,その死に変死の疑いがあれば,検察官が検視を行った上で,犯罪捜査に移行することが多いと思われます。)。

 そのため,犯罪捜査に関するルールを定めたものとは言えない医師法上の「異状死」をどう捉えるかについて,見解がわかれています。

 日本法医学会は,平成6年5月に「異状死ガイドライン」を作成し,異状死の通報義務を定めた医師法21条について,「社会生活の多様化・複雑化にともない,人権擁護,公衆衛生,衛生行政,社会保障,労災保険,生命保険,その他にかかわる問題が重要とされなければならない現在,異状死の解釈もかなり広義でなければならなくなっている」との見解を示し,「基本的には,病気になり診療を受けつつ,診断されているその病気で死亡することが『ふつうの死』であり,これ以外は異状死と考えられる。」とし,これを受けた法医学の教科書では,異状死体は,「病死又は自然死(老衰死)ではない死体ということであり,病死又は自然死であるか否かが不明な死体も含まれる」とも定義されているのです(南山堂「学生のための法医学」)。
 しかし,このように異状死の範囲を広く捉えようとする法医学会の見解,殊に診療行為中又は比較的直後の急死で死因が不明な場合等,医療過誤が疑われかねない死についても広く異状死と捉えようとする見解に対しては,日本外科学会等から,医師の萎縮医療を招き,遺贈との信頼関係をも破壊しかねないなどの問題が指摘され,強い反対意見が出されています。
 また,法的にも,医療過誤が疑われる死亡を異状死として通報義務を認めることは,黙秘権を保障する憲法38条に抵触するおそれがあるとも指摘されているのです。

 

弁護士 金子達也

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★