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菅野亮弁護士の刑事裁判に関する論考が「自由と正義」(2017年5月号)に掲載されました

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菅野亮弁護士の論考が,「自由と正義」(2017年5月号,62頁)に「検証・刑事裁判(第8回)」として掲載されました。

本稿は,控訴審(高松高裁平成29年2月8日,LEX/DB【文献番号】25545029)で無罪とされた徳島地裁平成28年3月24日判決(LEX/DB【文献番号】25545236)を紹介するものです。

本稿のテーマは,「共犯者供述の怖さ」です。刑事裁判では,共犯者供述の信用性が問題となる事案が多くありますが,共犯者供述には「引き込みの危険」があります。

「あいつから指示されたんです」,「首謀者はあいつだ」という共犯者の話はよくあります。その話が真実である場合もあるでしょう。
しかし,そう言えば自分の刑が軽くなるという気持ちから,過度に誇張した話をしたり,誰かに責任を押しつける虚偽の供述が行われることも容易に想像できます。

共犯者であるが故に,事件についてはリアルに語ることができますし,その供述の信用性を判断することは裁判官であっても容易ではありません。

本件でも,1審は,共犯者供述を一部信用し,控訴審は全面的に否定しています。
その点が有罪と無罪の結論を分けています。
共犯者は,被告人のアドバイスで財産隠滅をしたと述べましたが,そのように述べることで,自己の責任を軽減できる状況です。共犯者供述の信用性判断を慎重に行わなければならない典型的な事件といえます。

裁判官によって判断が分かれるような難しい問題ですが,やはり,共犯者供述しか証拠が存在しないような事件では,刑事裁判の鉄則である,「疑わしきは被告人の利益に」という原則を忘れてはならないように思います。