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研修 『責任能力を争う裁判員裁判の弁護活動』

2013.03.12ブログ

 2013年2月18日,千葉県弁護士会において,「責任能力を争う裁判員裁判の弁護活動」という研修が行われ,私日高も参加してきました。
 講師は,日弁連精神鑑定研修プロジェクトチームの菅野亮弁護士と田岡直博弁護士です。菅野弁護士は,いわずもがな,我が法律事務所のボスです。

 「責任能力」,「精神鑑定」という言葉は,我が国の重大刑事事件においても,度々紙面を飾ります。
 そのため,一般市民の方々にとって,とっつきにくい言葉の多い法律用語の中でも比較的なじみがある言葉でしょう。
 ところが,なじみある言葉でありながら,実際には,法律家の専門家である弁護士にとっても(私だけかもしれませんが。。。),正確に理解するのには骨が折れる分野です。

研修では,責任能力の一般的な概念説明から,裁判員裁判を見据えた弁護活動のあり方について,講義が行われました。
 
 刑法39条は,1項で,心神喪失者の行為は,罰しないと定め,2項で心神耗弱者の行為は,その刑を減軽すると定めています。そして,判例(大判昭和6年12月3日刑集10巻12号682頁)は心神喪失(心神耗弱)の意味を,精神の障害により,弁識能力がない(心神耗弱では著しく障害がある状態)又は制御能力がない(心神耗弱では著しく障害がある状態)であるとしています。
 難しい言葉が並びましたが,ポイントは,精神症状の影響により,その問題となっている行動が悪いと認識したり,思いとどまることができなくなったりしてしまったことにあります。
 実際の判断にあたっては,鑑定結果も踏まえつつ,犯行前後の言動や,動機が理解できるのか等の様々な考慮要素から,精神障害のために,その犯罪を犯してしまったのか,もともとの人格から犯罪を犯してしまったのかという点が検討されることになります。

 講義では,上記の概念に即して,接見や公判前整理手続,公判における弁護活動のあり方についても講義がなされ,菅野弁護士と田岡弁護士の弁論の実演も行われました。
 両先生のよどみのない口頭説明に,私はただ感銘を受け,隣に座っていた弁護士は,思わず「すげー」と呟いていました。

 ところで,一般市民の方々が「責任能力」,「精神鑑定」の言葉から連想する司法のイメージは決して良いものではないかもしれません。実際に,インターネットの某質問掲示板を覗くと,責任能力が無い者を罰しないとすることについて”なぜ”という疑問を持つ方が少なくないようです。これは,おそらく,精神障害であるとされた者が刑罰を逃れ,社会に出てくることに,ある種の不安感を抱いているからではないでしょうか。しかし,精神障害であるとされた方への処遇のあり方というのは,刑罰以外にも様々なものが考えられるところです。刑罰を科さないからといって,その人を野放しにする訳ではないのです。研修では,こうした処遇論を意識した弁論を行うことについても強調されていました。
 
 裁判員裁判における弁護士の求められる役割の一つに,難解な言葉を分かりやすくするというのがあります。それと同時に,一般市民の方々が抱いている刑事司法の”なぜ”を解きほぐすのも大事な役割であるように思いました。そのためにも,市民の方々にわかりやすい説明のできる弁護人,弁護士にならなくてはと思った次第です。
                             報告者 日髙