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故意・過失

用語集

過失」とは、一般的な意味では「あやまち」と言った意味だと理解されていると思いますが、民法上は、不法行為に基づく損害賠償が認められる要件の一つとされており(民法709条)、損害発生の予見可能性と回避可能性があるのに、それを回避する義務を怠ったことなどと定義されています。

分かりやすく言うと、普通注意して行動していたらその結果は避けられたのではないかという状況で、その結果を発生させてしまった場合に過失があると判断されます。
 例えば、自動車を運転していたDが、赤信号を無視して交差点に進行すれば、歩行者や他の自動車に衝突することは当然に予見することが可能だと思います。それにも関わらず、赤信号の交差点に進入し、歩行者に怪我をさせた場合には、その結果を回避しなければならない義務に違反しているので、過失によって生じた損害を賠償しなければなりません。

医療事故の場合ですと、医師は、「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」に従って治療等を行わなければならないとされていますから(最判昭和57年7月20日、判時1053ー96等)、それに満たない治療行為等を場合には過失行為とされます。例えば、Mという薬品は、ある症状のあるPさんには、その時点の臨床医学上、禁忌(使用してはいけない)とされていたにも関わらず、医師がPさんの症状を見落として、Mという薬品を使用し、その副作用でPさんが死亡してしまった場合などが、過失であると言えると思います。 

これに対して「故意」とは、その状況を認識した上で、結果が発生することを認容して行う行為です。

例えば、先ほどの赤信号の事案で、運転手が、歩行者を見て、その歩行者がたまたま憎い相手だったので、殺意を持って衝突させた場合には、故意による行為です。民事上の不法行為が成立するという意味では、「故意」でも「過失」でも同じ効果が生じます。他方、刑事事件においては、「過失」で人を死亡させた場合には「業務上過失致死罪」(刑法211条)ですが、「故意」の行為であれば「殺人罪」(刑法199条)となります。業務上過失致死罪だと、法定刑は、5年以下の懲役か禁固、または50万円以下の罰金とされていますが、「殺人罪」だと死刑・無期若しくは5年以上の懲役ですから刑事事件における処罰は全く異なってきます。