イギリス刑事法紹介㉘ 〜脅迫による強要(Duress by Threats)〜
「脅迫による強要(duress by threats)」とは、第三者から死亡または重大な身体的危害を加える旨の脅迫を受け、やむを得ず犯罪行為を行った場合に、刑事責任を否定し得る抗弁です。
この抗弁は、成文法により規定されたものではなく、すべて判例に基づいて法理が発展してきました。
脅迫による強要の抗弁が成立するためには、まず、被告人が死亡または重大な身体的危害を加えるとの脅迫を受けていると合理的に信じ、そうした脅迫がなければ犯罪の承諾をしていなかったと認定される必要があります。したがって、例えば財産に対して危害を加えるとの脅迫があったとしても、脅迫による強要の抗弁は成立しないことになります。
次に、同じ状況に置かれた合理的な人物であれば、被告人と同じように振る舞ったであろうと考えられる場合でなければ、脅迫による強要の抗弁は成立しません。ただし、被告人のキャラクターを考慮した上でこうした判断が行われることとされているため、必ずしも通常一般人の判断だけが基準となるわけではありません。
また、脅迫による強要の抗弁が成立しない犯罪も判例法上定められており、殺人罪(murder)や殺人未遂罪(attempted murder)といった犯罪については、この抗弁は認められないとするのが判例法理です。
以上のような要件がすべて揃った場合には、抗弁が成立して、無罪の判決が言い渡されることになります。
日本法でいえば、緊急避難に近い概念と考えられますが、成立要件には異なる点も多く、必ずしも重なるわけではありません。
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
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弁護士/英国弁護士 中井淳一
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★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★




