イギリス刑事法紹介㉙ 〜必要性(Necessity)〜
「必要性(necessity)」の抗弁は、より重大な害を避けるためにやむを得ず犯罪行為を行ったという状況において主張される抗弁です。長らくイギリス法上の独立した地位が不明確でしたが、判例の積み重ねにより、一定の要件の下に限定的な適用が認められるようになっています。
必要性の抗弁が論じられた代表的な事件として、結合双生児の分離手術が問題となった裁判例(Re A (Children) [2001] )があります。これは、結合双生児の体を切り離す手術をした場合には一方の子が死亡することは避けられないものの、手術をしなければもう一方の子の生存確率が著しく低くなるという事案において、手術により一方の子を切り離して死亡させたという事案でした。この点について、裁判所は、手術の実施について必要性の抗弁の適用を認め、無罪としました。もっとも、同判決は極めて例外的な事案として限定的に解されており、一般の犯罪事案への安易な援用は慎まなければなりません。
必要性の抗弁は、日本法上は存在していませんが、上記のような分離手術の事案については、正当行為を理由とした違法性阻却が主として問題になると考えられます。
医療の発達に伴い、医療行為において命の選択を迫られる場面も増えることになるため、適用法を問わず、犯罪の成立を否定するような法理の適用は今後も問題になっていくと考えられます。
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
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弁護士/英国弁護士 中井淳一
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★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★




