通勤中に飲酒運転で検挙されると、勤務先に通知が届きます!?
令和8(2026)年3月
弁護士 金 子 達 也
1 最近、千葉県内では、運転免許の更新講習の際に「通勤中に飲酒運転で検挙されると、勤務先に通知が届きます!」と書かれた赤色(危険信号)のパンフレットを配付されているようです。
これを受け取り驚いた方もいらっしゃるのではないかと思います。
そこで、少し解説します。
2 この通知は、令和5(2023)年6月28日に改正・施行された、千葉県飲酒運転の根絶を実現するための条例13条の規定により求められる措置です。
3 令和3(2021)年6月、千葉県八街市内で下校中の児童の列に飲酒運転のトラックが衝突して5名が死傷するという、痛ましい飲酒運転死亡事故が発生しました。
千葉県は、このような痛ましい事故を2度と起こさないようにとの理念のもと、飲酒運転の根絶を目指し、令和4(2022)年1月1日、「千葉県飲酒運転の根絶を実現するための条例」を制定・施行しました。
この条例は、飲酒運転を根絶するためには、運転者1人1人のみならず、その雇用主等まで含めた徹底した法令遵守をはじめ、県民の飲酒運転根絶意識の向上を図るための啓発や体制整備など、県、県民、事業者等が一体となって、飲酒運転根絶に取り組む必要があるとして制定されたものでした。
もっとも令和4年の制定当時は、上記13条の規定はありませんでした。
4 しかし、その後も残念ながら飲酒運転の根絶には至らなかったことから、千葉県は、飲酒運転根絶に向けた取組を強化するため、この条例を改正し、上記13条を新設しました。
前提として、この条例では、制定当時から、県、県民、事業者、飲食店経営者、酒類小売業者、タクシー事業者及び運転代行者、駐車場所有者等、イベント等主催者ら各々に対し、飲酒運転の根絶を図るための施策や措置等を講じる努力義務を課していました。
そのうち、事業者に対する努力義務を見てみると、条例6条が、事業者に対し、その役割として、自動車等の運行にあたりアルコール検知器等を活用するなどして運転者の飲酒の有無を確認する等の措置を講じるよう努め(同条1項)、従業員に対し飲酒運転の根絶に関する教育・指導に努め(同条2項)、飲酒運転撲滅に向けた国や県の施策に協力する(同条3項)よう求めていました。
上記13条は、事業者の上記努力義務を前提として、これを推進するために、従業員が通勤途上に飲酒運転等の違反で検挙された場合には知事が事業者にその旨を通報できるとし(同条1項)、この通報を受けた事業者は6条1項及び2項の措置を講じなければならないと規定しているのです。
少し言い換えると、上記13条は、通勤途上の飲酒運転を検挙した場合は知事がその勤務先に通報できることとし、その通報を受けた事業者は飲酒運転の根絶に関する施策(アルコール検知器の設置や従業員の教育・指導)を実施しなければならないことを定めているのです。
つまり、この規定は、あくまでも事業者向けに定められたものといえます。
なお、このような規定は、事業者の場合に限らず、例えば飲酒運転で検挙された被疑者が特定の飲食店で飲酒していたことが判明した場合には知事から飲食店に通報がなされ、通報を受けた飲食店は飲酒運転根絶に向けて条例で定められた措置を講じなければならないという趣旨の規定(14条)もあります。
5 このように、上記13条は、法令の建付けを見る限り「事業者に対する措置」として規定されたものです。
なので、弁護士としては、この規定を根拠に、運転免許証更新者に上記パンフレットが配布されて、『通勤中に飲酒運転で検挙されたら勤務先にチクるぞ!』などと、あたかも『脅し』のような手段で使われることは、やや違和感を感じてしまいます。
とはいえ、飲酒運転の根絶は県民の悲願ともいえますので、今回は、あまり目くじらを立てずに冷静に解説させていただきました。
以上
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★




