イギリス契約法紹介③~TermとRepresentation~
契約締結に至る交渉の過程では、様々な言葉が取り交わされ、合意に向けた協議がされることになります。電話やメールなど、コミュニケーションの種類は様々ですが、当事者間では膨大な量のやり取りがされることになります。
こうしたやり取りの内容が、すべて契約に含まれるかというと、そうではありません。契約内容に含まれる部分もあれば、含まれない部分もあり、現実にはなかなか区別が難しいことがあります。
この点について、イギリス契約法では、「Term(契約条項)」と「Representation(陳述/表明)」を区別する考え方を採っています。「Term」であれば、契約違反があった場合には履行利益を含む損害賠償の請求ができ、時には契約の解除も認められます。一方で、「Representation」の場合には、これに違反しても契約違反とはならず、一定の場合に「Misrepresentation」として原状回復が認められるのみです。
では、「Term」と「Representation」はどのように区別されるのでしょうか。
まず、最終的に契約書に記載されたかという点が、非常に重要です。イギリス法では、「parole evidence rule」が採用されており、裁判所は、契約書などの当事者の意思がはっきりと示された書面がある場合、契約内容について、その他の証拠による反証を受け入れないことが通常です。そのため、「Term」と「Representation」の区別は、第一義的には、契約書に記載されているか否かが重要です。
契約書に記載がない場合でも、例えば、一方当事者が専門知識等を持っていて、そうした専門知識等に基づいて提供した情報を理由に契約が締結された場合には、その部分が「Term」になると考えられています。過去の裁判では、中古自動車業者が走行距離について説明したにもかかわらず、それが虚偽であることが後から判明した場合に、走行距離に関する説明は売買契約における「Term」になると判断されたことがあります。
こうした考え方は、結論としては、日本法の解釈と大きく異なるわけではありません。ただし、「Term」と「Representation」をはっきり区別するという考え方自体は、日本の契約法とは少し異なるものです。
いずれにしても、契約を締結する場合には、何が契約内容となるかをはっきりと意識し、その部分を契約書に盛り込むことが、紛争解決のためには非常に重要といえます。
前の記事:イギリス契約法紹介②~約因(Consideration)~
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
弁護士/英国弁護士 中井淳一
https://japanese-lawyer.com/
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★




