一時的な海外旅行をしている場合の公訴時効
2026年2月
弁護士 菅 野 亮
1 犯罪を犯した場合でも、一定期間が経過した場合、時効となり、処罰することはできなくなります。なお、平成22年の刑事訴訟法の改正により、人を死亡させた罪のうち、法定刑の上限が死刑にあたるもの(例えば、殺人罪)については、公訴時効の対象から除外されましたが、それ以外の罪については、刑事訴訟法250条が罪の重さにより、公訴時効の期間を定めています。
2 公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進行しますが、「犯人が国外にいる場合」や「犯人が逃げ隠れているために有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかった場合」には、その間「進行を停止」します(刑事訴訟法255条)。
3 一時的な海外旅行の場合には、「犯人が国外にいる場合」に該当しないという考え方がかつては有力でした。
しかし、この点について、最高裁は次のとおり、一時的な海外旅行であっても、「犯人が国外にいる場合」に該当すると判断しました(裁決平成21年10月20日刑集63巻8号1052頁)。
「所論は,本件においては公訴時効が完成している旨主張するが,犯人が国外にいる間は,それが一時的な海外渡航による場合であっても,刑訴法255条1項により公訴時効はその進行を停止すると解されるから,被告人につき公訴時効は完成しておらず,これを前提とする原判決の判断に誤りはない。」
4 上記の最高裁の判断があるため、現在の実務では、国外にいた全期間、時効の進行が停止したものと扱っています。なお、刑訴法55条1項ただし書により、時効期間については、時間を論じることなく初日を1日として計算することとされていますので、出国日と帰国日には、時効期間が進行することになります。
以上
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★




