看護師業務の事故と責任
2026年1月
弁護士 菅 野 亮
第1 看護師の資格
看護師の資格は、保健師助産師看護師法に規定されています(以下「看護師法」といいます。)。
看護師法第5条に、「この法律において『看護師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。」と定められています。
なお、看護師法は、准看護師についても規定しています。看護師法の第6条は、「この法律において『准看護師』とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。」と規定しています。
看護師になろうとする者は、看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない(看護師法第7条3項)とされ、准看護師になろうとする者は、准看護師試験に合格し、都道府県知事の免許を受けなければならない(同法8条)とされています。
第2 看護師等の欠格事由
看護師等の欠格事由は、看護師法第9条に以下のとおり定められています。
(第9条)
次の各号のいずれかに該当する者には、前二条の規定による免許(以下「免許」という。)を与えないことがある。
1 罰金以上の刑に処せられた者
2 前号に該当する者を除くほか、保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者
3 心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
4 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
第3 看護師の法的責任
1 看護師業務の法的責任として、業務上問題となるものは、いわゆる医療事故が生じた際の看護師の法的責任です。
実務では、医療事故が生じた際、医療機関や医師に対する責任追及が行われることが多いです。しかし、医師が適切な指示をしたものの、看護師が不注意でミスした場合などには、看護師に対する損害賠償請求がなされる場合もあり得ます。そのような場合、看護師は、医療事故について、次のような法的責任を負う場合があり得ます。
【看護師の負う責任の種類】
① 民事上の責任(金銭の損害賠償義務が生じます)
② 刑事上の責任(犯罪になり、刑罰に処されます)
③ 行政上の責任(業務停止や資格の喪失があり得ます)
2 医療事故と無関係に看護師が犯罪を行った場合(例えば、覚醒剤自己使用罪で有罪になった場合等)、当然、当該看護師は、刑事上の責任を負いますので、刑事罰を受けることになります。しかし、刑事罰だけでなく、行政上の責任として、業務停止といった処分を受けることになります。
2025年の医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨をみると、覚醒剤取締法違反を犯した看護師に業務停止2年、大麻取締法違反を犯した看護師に業務停止1年6月の処分が相当だと答申されています。
また、犯罪を行った場合には、懲戒解雇等、勤務する病院内の処分を受ける可能性もあります(なお、看護師が公務員の場合、刑事罰を受けると、国家公務員法や地方公務員法によって、失職する場合があります。)。
3 看護師法14条は、看護師の行政処分について次のとおり規定しています。
(第14条)
保健師、助産師若しくは看護師が第9条各号のいずれかに該当するに至つたとき、又は保健師、助産師若しくは看護師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 3年以内の業務の停止
三 免許の取消し
第14条が引用する第9条は、看護師等の欠格事由を定めた規定ですが、看護師等になった後に、欠格事由が生じた場合には、一番重い処分で「免許の取消し」があり得ます。
なお、厚生労働大臣は、医道審議会の意見を参考に行政処分を決定します(看護師法15条)。
医道審議会の議事要旨をみると、2025年に、最も重い、免許取消しが相当だと答申された件数は5件ありました。内訳は、殺人が1件、窃盗が2件、放火・詐欺が1件、恐喝が1件となっています。もっとも軽い、戒告となった事例は1件で、建造物侵入でした。
道路交通法違反でも、軽いもので業務停止3ヶ月、重いもので業務停止1年6月の行政処分が相当だと答申されていますので、同じ道路交通法違反であっても、悪質性等が処分の重さに影響していると考えられます。
なお、2024年の医道審議会の議事要旨をみると、免許取消しが4件あり、内訳は、窃盗1件、非現住建造物等放火1件、建造物等以外放火1件、不同意わいせつ・性的姿態等撮影1件となっています。
以上のとおり、医療事故やその他の事件を犯したことにより、看護師資格に影響がでる場合もあります。早めに弁護士と相談することが必要です。
以上
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★




