イギリス契約法紹介①~申込と承諾(Offer & Acceptance)~
イギリス法上、契約の成立のためには、一方当事者からの申込(offer)があり、他方当事者がこれを承諾(acceptance)する必要があります。このような基本的な契約の成立要件は、日本法と変わりません。
また、イギリス法でも、日本法と同様に、申込を誘うような働きかけについては、申込自体とは区別され、「申込の誘引(invitation to treat)」に当たるとされています。イギリスの判例法上、店舗での商品の陳列や、広告への掲載などは、申込には当たらず、申込の誘引に留まると判断されています。
承諾について、イギリス法でも、一般的には、日本法と同様に到達主義の原則が取られ、申込者に承諾が伝えられた時に、契約は成立するとされています。
ただし、承諾には、イギリス法に特有の「Postal Rule」というものが古い判例法により定められ、現代でも範囲を限定しつつ適用されていることに注意が必要です。「Postal Rule」とは、郵便を使って承諾を行った場合には、到達の時点ではなく、発送の時点で承諾があったと判断するという法理です。
この法理は、Adams vs Lindsellという1818年の判例により確立されたものです。当時は、郵便事情が現在とは異なるため、承諾が到達時点で判断されると、承諾の効力に時間がかかりすぎるという点が正当化根拠でした。
現在においてもこの法理を維持するかという点について、反対意見もあります。実際に、その後の判例法理により、「Postal Rule」は適用範囲の限定を受けており、例えば、国営の郵便(Royal Mail)を使った場合に適用は限定されています。
それでもなお、現在も「Postal Rule」自体は有効な判例法として存在しており、200年以上前の判例が今も生きているという意味で、コモン・ローの伝統を感じさせる1つの事象といえます。
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
弁護士/英国弁護士 中井淳一
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★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★




