不同意性交等、不同意わいせつ行為とは(性犯罪に関する刑法改正)
弁護士 菅 野 亮
令和5年6月16日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)が成立し、同年7月13日から施行されています。
この法改正により、不同意性交等及び不同意わいせつ罪に関する改正が行われています(これまでは、強制性交等罪〔その前は強姦罪〕とされていましたが、呼称も改正されています。)。
不同意わいせつ罪については、次のような条文になりました。
1号から8号までに列挙された原因で、同意しない意思を形成したりすることが困難な状態でわいせつな行為をした場合に、不同意わいせつ罪が成立することになります。
(刑法176条) |
不同意性交等罪も、不同意わいせつ罪と同様の構成ですが、「わいせつ行為」ではなく、処罰の対象となる行為が「性交等」となっています。
(刑法177条) |
要件について若干補足をしますが、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪では、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」の原因となり得る行為・事由として、以下の8つの類型が定められています。不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が成立するためには、これらの行為・事由により、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」になったことが必要です。
① 暴行又は脅迫
② 心身の障害
③ アルコール又は薬物の影響
④ 睡眠その他の意識不明瞭
⑤ 同意しない意思を形成、表明又は全うするいとまの不存在
(性的行為がされようとしていることに気付いてから、性的行為がされるまでの間に、その性的行為について自由な意思決定をするための時間のゆとりがないことをいいます。)
⑥ 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖又は驚愕
(いわゆるフリーズの状態、つまり、予想外の又は予想を超える事態に直面したことから、自分の身に危害が加わると考え、極度に不安になったり、強く動揺して平静を失った状態をいいます。)
⑦ 虐待に起因する心理的反応
⑧ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
(「経済的関係」とは、金銭その他の財産に関する関係を広く含み、「社会的関係」とは、家庭・会社・学校といった社会生活における関係を広く含みます。また、「不利益を憂慮」とは、自らやその親族等に不利益が及ぶことを不安に思うことをいいます。)
①暴行や脅迫があった場合に、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」になることは当然といえますが、③お酒を飲んで性行為を行った場合、どの程度の酩酊状態での性行為について、本罪が成立するのか等、不明瞭な部分があるように思われます。
以上
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★