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5歳以上年長者による不同意性交等、不同意わいせつ罪の内容と参考裁判例

2025.06.17ブログ

弁護士 菅 野  亮 

 

 令和5年6月16日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)が成立し、同年7月13日から施行されました。
この法改正により、いわゆる性交同意年齢の引上げが行われています。

 上記の刑法改正により、性行為の相手が13歳未満の子どもである場合、又は、相手が13歳以上16歳未満の子どもで、行為者が5歳以上年長である場合に、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が成立することになりました。

 法務省のQ&A(Q7 いわゆる性交同意年齢について、どうして「16歳未満」とされたのですか。)では、性交同意年齢が、16歳未満とされた理由については、「13歳以上16歳未満(中学生くらいの年齢層)の人は、(1)「行為の性的意味を認識する能力」が一律にないわけではないものの、(2)「行為の相手との関係で、その行為が自分に与える影響について自律的に考えて理解したり、その結果に基づいて相手に対処する能力」が十分に備わっているとはいえず、相手との関係が対等でなければ、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力に欠けると考えられます。このような考え方を前提として、今回の改正法では、性交同意年齢について、16歳未満とされた」と記載されています。

 なお、13歳以上16歳未満の者に対しては、5歳以上年長の者の行為が処罰対象とされています。この点も、法務省のQ&A(Q8)では、「どのような場合に対等な関係といえなくなるかについては、一般的に、相手との年齢差が大きくなればなるほど、社会経験などの差によって対等ではなくなっていくと考えられます。こうしたことを前提として、刑罰の謙抑性の観点から、13歳以上16歳未満の人との関係で、絶対に対等な関係はあり得ないといえるような年長者による性的行為を一律に処罰対象とするため、心理学的・精神医学的知見も踏まえ、5歳以上年長の者による性的行為を処罰することとされたものです」と記載されています。

 また、年齢差が5歳未満である年長者(例えば、18歳と14歳)との間の性行為は、それ自体が犯罪になるわけではありませんが、社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させたり、予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させたりして、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせ、あるいはそのような状態にあることに乗じて、性的行為をしたものであれば、不同意わいせつ罪もしくは不同意性交等罪として処罰対象となります。

 

 この類型の不同意性交等罪、不同意わいせつ罪の裁判例で公刊されているものは多くありません。

 長崎地裁令和6年5月22日判決では、未成年者誘拐、不同意性交等で有罪とししつ、懲役3年、執行猶予5年と、執行猶予付の判決となっており、犯行にいたる経緯等によっては、実刑とならない場合もあります。

 上記事案は、被告人が25歳で、被害者が15歳と、それなりの年齢差がありますが、「被告人と被害者は、お互いに不安定な精神状態にある中、SNSを通じて親密に交際することで精神的な結び付きを強め、相互に依存し合う関係」で、「交際開始から約4か月が経過して初めて対面し本件各犯行に至っていることから、本件は、当初から未成年者を性的行為の対象として標的にしたり、その能力不足に付け込んだり、篭絡したりして性的行為に及んだ事案とは、犯行に至った経緯、動機、被告人と被害者の関係性(対等性)等の点で犯情評価に質的に差がある」と量刑理由で判示されています。

 逆にいえば、上記判決が指摘するとおり、当初から未成年者を性的行為の対象として標的にしたり、その能力不足に付け込んだり、篭絡したりして性的行為に及んだ事案であれば、実刑になる可能性が高いといえます。

以上

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★