2025年6月1日から変わる法律(「拘禁刑」の施行開始)
2025年5月
弁護士 虫 本 良 和
以前このコラムでも紹介しましたが(※2022年7月27日「改正刑法①『拘禁刑の新設』」)、2022年(令和4年)に成立した「刑法等の一部を改正する法律」(改正刑法等)によって改正された、いくつかの法律が、本年6月1日から実際に施行(実際に法律の効果が発生し、個々の事件に適用されること。)されることになります。
その中の1つが、拘禁刑の創設(懲役・禁錮の廃止)です。
改正前の刑法(9条)は、刑事施設で身体を拘束する刑罰(自由刑)の種類として「懲役、禁錮」を定めていましたが、改正法では、これらが廃止され、新たな刑罰の種類として「拘禁刑」が創設されました。
改正法が施行されることを受けて、2025年6月1日以降に行った行為につき起訴され、裁判官が自由刑を言い渡す場合には、拘禁刑が選択されることになります。
なお、拘禁刑の種類として、無期と有期があること、有期拘禁刑は1月以上20年以下とすることは、従前の懲役刑及び禁錮刑と同様です。また、刑の加重や減免に関する規定の適用も、改正前と同様です。例えば、有期拘禁刑を加重する場合に長期を30年とすること、死刑や無期拘禁刑を減軽する場合に長期を30年とすること、有期拘禁刑を減軽する場合に1月未満に下げることができることなどは、現在の懲役刑等の場合と同じです。
拘禁刑の内容について、改正後の12条2項は「拘禁刑は、刑事施設に拘置する」と定めています。そして、12条3項は「拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため, 必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」と定めています。(なお、30日未満の自由刑である拘留の内容を定める刑法16条も、同様の改正がなされ、2項で「改善更生を図るため, 必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」と定められています。)
「懲らしめ」のために刑務作業を科すという刑罰であった「懲役」を廃止し、作業や指導による改善更生を目指すという拘禁刑導入の目的自体は適切であるといえますが、改正によってどのような効果が生じるかは、今後の運用を見ながらしっかりと検討していく必要がありそうです。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★