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「執行猶予に関する刑法改正の施行に向けて」①

2024.05.07ブログ

2024年5月

弁護士 虫本良和

 

 以前、本コラム(改正刑法④「執行猶予期間経過の効果に関する規定の新設」)でも紹介しましたが、2022年(令和4年)6月13日に成立した「刑法等の一部を改正する法律」(改正刑法等)によって、執行猶予制度に関するいくつかの重要な改正がなされています。

 本改正法の成立時点で、執行猶予制度に関する改正部分については、「公布後3年以内」に施行されることが予定されていましたが、その後、正式な施行日が、2025年(令和7年)6月1日からと決定されました。

 なお、同日から、刑罰の種類について、これまでの「懲役刑」と「禁錮刑」の区別を廃止し、新たに創設された「拘禁刑」に一本化(自由刑の単一化)する改正法も施行されることになっています。

 執行猶予制度に関する改正内容について、確認しておきます。

 

① 再度の執行猶予を付する条件の緩和(刑法25条2項本文)

 改正前は、執行猶予が付いた禁錮刑以上の有罪判決を受けた場合に、この執行猶予の期間中に、さらに別の罪を犯してしまったというケースでは、新しい罪の判決の際にもう一度執行猶予を付けることできるのは、「1年以下の懲役又は禁錮の言渡し」が相当な事案で、かつ「情状に特に酌量すべきものがあるとき」に限られていました。

 改正後は、この再度の執行猶予を認める際の条件が、「2年以下の拘禁刑」にまで引き上げられます。

 この改正によって、以前よりも、再度の執行猶予の条件が拡大(緩和)されたものといえます。

 

 ② 保護観察付執行猶予中の再度の執行猶予(刑法25条2項本文)

 改正前は、執行猶予判決に、保護観察が付されていた場合に、その執行猶予期間中に別の罪を犯してしまったというケースでは、再度の執行猶予を付することはできませんでした。

 改正後は、保護観察付の執行猶予中であっても、上記①と同様の条件で、再度の執行猶予を付することができるようになりました。

 本改正によって、裁判官が判決を決める際に、従来よりも、積極的に保護観察を活用しやすくなるのではないかと言われています。弁護人としても、これまでであれば、実刑判決を受けて服役を余儀なくされていたようなケースでも、保護観察を活用して社会内での更生する機会を確保するよう求めていく弁護活動が重要になってくると考えられます。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★