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Q 被害届や告訴を受理してもらうためのコツはありますか

よくあるご質問刑事事件

 犯罪捜査規範は「警察官は、犯罪による被害の届け出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。(61条1項)」、「司法警察員たる警察官は、告訴をする者があったときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節の定めるところにより、これを受理しなければならない。(63条1項)」と規定しています。
  さらに言えば、犯罪捜査規範は「前項(61条1項)の届出が口頭によるものであるときは、被害届に記入を求め又は警察官が代書するものとする。(61条2項)」、「口頭による告訴を受けたときは、告訴調書を作成しなければならない。(64条1項)」と規定しています。
  これらの規定を文字通りに読めば、被害届や告訴を受理するのは警察の義務であるから、特に告訴状等の書面を持参しなくても、被害届や告訴は当然受理されると考えても良いように思えます。
  しかし、実情としては、被害者が警察に被害申告に行った場合、いわゆる「困りごと相談」として親切に対応してはもらえますが、被害届や告訴の受理に至るまでには高いハードルがあることが多いです。
  読者の中にも、警察に被害の申告に行っても、事件にならないとやんわり難癖をつけられたり、我慢や示談を勧められるだけで被害届を受け付けてくれる素振りもないという印象を感じた方も、おられるのではないでしょうか。

 

 刑事訴訟法は、「司法警察員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。(189条2項)」と規定していますので、犯罪があると思料されれば、司法警察員である警察官には捜査を行う義務が生じます。
  当然ながら、被害届や告訴は、警察官に「犯罪があると思料」させる事情のひとつになります。
  しかし反面、警察官としては、その申告自体が虚偽である可能性や、申告が正しくても証拠が乏しく犯罪を証明できない可能性、更には既に公訴時効が成立していて犯人を処罰できない可能性が潜んでいることをも念頭において、被害届や告訴を受理するかどうかを慎重に判断する必要があるのです。
  このことは、犯罪捜査規範に「告訴があった事件については、特にすみやかに捜査を行うように努めるとともに、次に掲げる事項に注意しなければならない。①ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか。②当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないかどうか。(67条)」と規定されていることからもわかります。
  犯罪捜査規範67条は告訴について規定されたもので、被害届についてはこのような規定はありませんが、被害届を受理する場面においても、警察はこの規定を念頭に置いているものと思われます。
  このような事情により、警察が、被害届や告訴を直ちに受理して捜査に動き出してくれることは珍しく、むしろ、実情は、何度も警察に足を運んで事情を説明し、時には防犯ビデオ映像などの必要な証拠物を提出するなどして、担当者の理解を得る努力をしなければ、捜査機関が重い腰を上げてくれることは難しい場合が多いのです。

 

 そこで、被害届や告訴を受理してもらうためのコツとして、次のような点に注意して準備を進めることをお勧めします。
 ⑴ 被害の日時、場所、状況を具体的に説明できるように、記憶を呼び覚まし、できればメモしておきましょう。
   被害の日時は、時効が成立していないかを判断するための情報になります。
   なお、被害の状況自体については、できるだけ詳しく説明できるように記憶を喚起しておく必要がありますが、その反面、被害事実とは直接関係しない経緯等の事情は、できるだけ簡潔に説明できるように整理しておくことをお勧めします。
   その方が、忙しい警察官に対し、限られた時間で的確に被害の申告を行うことができるからです。
 ⑵ 前記⑴の作業を行った上で、具体的な被害事実が、刑法等に規定された犯罪行為と言えるのかを確認しておきましょう。
   被害事実が犯罪行為と評価されなければ被害届や告訴は受理されません。
   なお、この判断には、深い法的知識が必要な場合もあるので、もし弁護士への依頼を考えている方は、遅くともこの局面で弁護士に相談することをお勧めします。
 ⑶ 被害事実を証明できる証拠(電話録音・メール履歴。防犯ビデオ映像)があれば、説明資料として準備しておきましょう。
   殊に近隣トラブルなどで、被害が連続しているような場合には、新たな被害を阻止し、かつ、仮に新たな被害が発生した場合には明確な証拠を残すために、防犯ビデオ等の設置をお勧めすることもあります。
 ⑷ 被害届や告訴状等の書面は必ず用意すべきものではありません。
   しかし、これらの書面があれば、口頭で説明するよりは整理されてわかりやすく、かつ、警察官の書類作成の義務も省けて好印象になろうかと思います。
   可能であればこれらの書面を準備した方が良いと思われます。

 

 上記⑴~⑷の作業については、もちろん御自分で行うことも可能ですが、上記⑵の判断に関しては刑法等の深い理解が必要ですし、上記⑷の書面を作成する場合には弁護士であれば過不足なく説得力のある書面を作成できますので、できれば弁護士の助言を受けることをお勧めします(法律相談を受けておくだけでも役に立つと思います。)。
  お気軽に御相談ください。

2024年4月     

弁護士 金 子 達 也 

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★