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チケットの転売が処罰されるケース~特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律~

2023.06.12ブログ

2023年6月

弁護士 菅 野  亮

1 特定興行入場券の不正転売の禁止
 特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(以下「本法」といいます。)第3条は、「何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない」と定め、この規定に反した場合には、第9条で「一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と罰則が定められています。
 したがって、本法により、特定興行入場券の不正転売が処罰されることになります。
 例えば、アイドルグループのコンサートのチケットを興行主の許可もなく、販売価格よりも高額な値段で転売した場合、この法律により処罰される可能性があります。

(そもそも、転売目的での購入が禁止されている場合、その目的を秘して購入する行為自体が詐欺罪等の犯罪に該当することも考えられます。)

2 特定興行入場券
 本法で、「興行」とは、「映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツを不特定又は多数の者に見せ、又は聴かせること(日本国内において行われるものに限る。)をいう」とされています。
 また、「興行入場券」とは、「それを提示することにより興行を行う場所に入場することができる証票(これと同等の機能を有する番号、記号その他の符号を含む。)をいう」とされています。

3 不正転売とは何か
本法で、「特定興行入場券の不正転売」とは、「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいう」とされています。
 不正転売か否かは、
① 興行主の事前の同意を得ない、
② 業として行う有償譲渡、
③ 興行主等の販売価格を超える価格をその販売価格とする、
 といった点で判断されることになります。

4 裁判例
 本法は、令和4年に施行された新しい法律であり、判例データベース等で公開されている処罰例は多くありません(処罰される場合でも、略式手続による罰金刑となる場合も多いと思われます。)。
 本法に関する裁判例としては、大阪地裁令和2年8月27日判決がありますが、この裁判では、懲役1年6月及び罰金30万円に処した上で、3年間の執行猶予付判決としています(ただし、この裁判では、特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律違反だけでなく、有印私文書偽造・同行使被告事件が併合されています。)。
 量刑の理由では、「被告人は,アイドルグループの公演を良い席で見たいなどと考え,転売されているチケットを複数入手するなどした上で,偽造身分証明書を利用して公演に入場するほか,残りのチケットを転売し,得た利益をチケットの購入代金に充てるということを繰り返す中で,本件各犯行を敢行した。その動機や経緯に酌むべき事情は特に認められない。被告人の犯行は,興行入場券の適正な流通を阻害し,不正転売の防止に対する興行主の努力を無にするものである。」などと指摘されています。

以上

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★