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「オンライン接見」の実現に向けて①

2023.05.02ブログ

弁護士 虫本良和

 

令和4(2022)年7月から開催されている法制審議会「情報通信技術関係」部会では、刑事手続きにおける電子化(例えば、令状や証拠書類を紙から電子データに変えること等)やオンライン化(例えば、裁判での証人尋問や、捜査段階での取調べ等を対面でなくオンラインで行うこと等)について、その必要性や問題点等について、幅広い議論が行われています。

 その中のテーマの一つとして、弁護人等が行う接見をオンラインで実施することについての議論も行われています。

 

 現在、弁護人や依頼を受けて弁護人になろうとする弁護士が、接見(身体拘束を受けた被疑者・被告人との面会)をしようとする場合には、身体拘束先である警察の留置場や拘置所に行き、接見室で面会をすることが原則となっています。

 憲法34条前段や憲法37条3項は、誰もが弁護人に相談して助言を受けるなどして、弁護人から援助を受ける権利を保障しており、刑事訴訟法39条1項が定める接見交通権は、被疑者・被告人が弁護人の援助を受けるための最も重要な権利のひとつといえるものです。また、接見交通権は、弁護人がその職責を果たすために保障されている弁護人固有の権利でもあります。

 

 この点、当事務所がある千葉県も含めて、警察署や拘置施設は、県内の各地域に散在しており、場所によっては、弁護士事務所から直線距離で50km以上離れている警察署もあります。さらに、全国的にみれば、広大な面積を有する北海道や、離島が多くある沖縄や鹿児島など、一回の接見がまさに「一日仕事」になるようケースも少なくありません。もちろん、弁護活動を行う上では、直接会って話をしなければ確認できないことも多く、どれだけ留置場所が遠方であっても、弁護士が接見に行く必要があるのは当然ですが、弁護士の事務所或いは事務所の近くにある施設(警察署、検察庁、拘置所、法テラス等)から、オンラインでの接見ができるようになれば、被疑者・被告人が弁護人から援助を受ける権利を、より強く保障することができるのは間違いありません。普通に生活をしている中で、ある日突然身に覚えのない嫌疑をかけられて逮捕されてしまうということは、誰にでも起こり得ることです。犯罪の嫌疑を受けた人が、この国のどこで身体拘束を受けた場合であっても、オンライン接見を含めて、早期かつ適時に、弁護士から助言を受けられるシステムが整備されていることは、全ての市民にとっても有益なことであると考えます。

 

 そもそも、現代社会では、ビジネスシーンはもちろん、行政を含めたあらゆる分野でオンラインが活用されています。そのような流れを受けて、刑事手続きについても電子化やオンライン化を進めるための協議が行われているのですから、接見だけがその議論に取り残されるというのはあまりに不自然であり、不合理です。

 

 速やかに、かつ、日本全国でのオンライン接見を実現し、被疑者・被告人が、十分に弁護人の援助を受けられるようにするべきであると考えます。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★