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ストーカー規制法はどのような法律なのか① ~目的と規制対象~

2023.03.14ブログ

令和5年1月
弁護士 金 子  達 也

1 目的
  ストーカー規制法(正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」ですが、ここでは「ストーカー規制法」と略称します。)は、ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的として制定された法律です(法1条)。

2 規制対象
ストーカー規制法が規制対象とする行為は、「つきまとい等(下記⑴)」、「位置情報無承諾取得等(下記⑵)」、「ストーカー行為(下記⑶)」の三つです。
当事者の個々の行為が「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」に当たるか否かを判断する場合には、相手方の「目的」と被害者と相手方との「関係性」が問題となります(そのことについては下記⑷で解説します。)。
なお、前二者と後者では規制の方法(在り方)が違います(この点は次回に解説します。)。

 ⑴ つきまとい等
   元来、ストーカー規制法が規制の対象とする行為は、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又は配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対する次のア~クの行為とされており、これらの行為は「つきまとい等」と定義されています(法2条)。
  ア つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがり、住居等の見張り・押し掛け・みだりにうろつき(法2条1項1号)
  イ 監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置く行為(法2条1項2号)
  ウ 面会、交際等の要求(法2条1項3号)
  エ 著しく粗野又は乱暴な言動(法2条1項4号)
  オ 無言電話、拒否後の連続した電話や文書・FAX・電子メール・SNSメッセージの送付(法2条1項5号、2条2項)
  カ 汚物の送付等(法2条1項6号)
  キ 名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置く行為(法2条1項7号)
  ク 性的羞恥心を侵害する行為(法2条1項8号)

 ⑵ 位置情報無承諾取得等
令和3年(2021年)の法改正により、「つきまとい等」と同様に規制対象になった行為です(改正の経緯等については次々回に解説します。)。
   上記法改正により、①対象者の承諾なく、その所持する位置情報記録・送信装置(GPS等)に係る位置情報を取得する行為(法2条3項1号)と、②対象者の承諾なく、その所持する物に位置情報記録・送信装置(GPS等)を取付等する行為(法2条3項2号)が新たに規制対象とされました。

 ⑶ ストーカー行為
   ストーカー規制法は、同一の者に対し、「つきまとい等」又は「位置情報無承諾取得等」を反復することを「ストーカー行為」と定義して、上記⑴及び⑵とは別段の規制対象にしています(法2条4項)。

   このように、ストーカー規制法は、個々の「つきまとい等」又は「位置情報無承諾取得等」を規制対象の行為として定義した上、これらの行為が、同一の人に対し、反復して行われた場合には、更に「ストーカー行為」に当たるとして別段の規制対象にしているわけです。

 ⑷ 行為の「目的」と当事者の「関係性」
   ストーカー規制法は、個々の行為が「つきまとい等」又は「位置情報無承諾取得等」に当たるための要件として
  ① 特定の者に対する恋愛感情その他の「好意の感情」又はそれが満たされなかったことに対する「怨恨の感情」を充足する目的
  ② 当該特定の者又は配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と「社会生活において密接な関係を有する者」に対する行為
であることが必要と規定しています(法2条1項、同条3項)。
   そのため、実際の事件では、加害者側の言い分として、「恋愛感情はなかった(単なる友達である)」とか、「社会生活において密接な関係はなかった(単なる同僚である)」などの弁解がなされることがよくあります。

3 DV防止法との関係
  配偶者などの親しい間柄における暴力を規制する法律として、DV防止法(正式名称を「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」といいます。)があります。
  DV防止法では、当事者の「関係性」については「配偶者(事実婚、元配偶者を含む)、生活の本拠を共にする交際相手」と更に狭く限定されますが、その一方で、行為の「目的」は限定されていません。
  また、警察における担当部署という観点でいうと、ストーカー規制法に関連する事件は主に生活安全課が所管するのに対し、DV防止法違反に関連する事件は主に刑事課が所管します。
  そのため、実際の被害にあった場合、それがストーカー行為なのか、それともDV行為なのかを見極めて対処することも必要です。

  もっとも、警察では、ストーカー行為とDV行為との類似性に着目し、両者に垣根を設けることなく、同じ窓口で広く相談を受け付けています(例えば、千葉県警ホームページでは、ストーカー行為及びDV行為の総合相談窓口として「相談サポートコーナー(043-227-9110)」が紹介されています。)。
  自分がストーカー被害にあっているかもしれないと感じたときには、迷わず、最寄りの警察が設けるホットラインに相談することが大切です。

  次回はストーカー規制法による規制の内容について解説します。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★