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イギリス刑事法紹介⑥~証拠開示~

2023.02.07ブログ

 刑事裁判において弁護人が適切な防御活動を行っていくためには、捜査機関の保有する証拠の開示を受けることが不可欠です。捜査機関は、起訴前から多くの証拠を収集しますが、検察官が裁判での取調べを請求する証拠は、通常、収集した証拠のごく一部です。検察官が取調べを請求しなかった証拠の中には、弁護側にとって有利な証拠が含まれていることがあるため、その開示を適切に受けることが重要になります。

 日本法の下では、弁護人は、制度上、類型証拠開示請求及び主張関連証拠開示請求により検察官に証拠の開示を求めることになっています。これらの請求があった場合、検察官は、原則として該当する証拠を開示する義務を負います。

 イギリスの刑事法でも、検察側(Crown Prosecution Service)は、裁判への提出を予定していない証拠であっても、一定の証拠については弁護人に開示する義務があります。基本的には、検察側は、「検察側の主張を弱め、または、弁護側の主張の助けになり得ると合理的に考えられる」証拠について、弁護側に開示する義務があります(section 3(1)(a) of Criminal Procedure and Investigations Act 1996)。
 一見すると、広範な証拠の開示が認められそうな法文になっていますが、要件に該当するかを判断するのが検察側であるため、適切な証拠開示を担保できるかは問題となり得ます。また、検察側が証拠開示の前提として検討すべき証拠のリストについては、警察が作成することになっていますが、不十分なリストしか作成されないことが常態化しているとの批判があります(HM Crown Prosecution Service Inspectorate and HM Inspectorate of Constabulary and Fire & Rescue Services, ‘Making it Fair: The Disclosure of Unused Material in Volume Crown Court Cases’ (2017) )。
 

※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。

弁護士/英国弁護士 中井淳一 https://japanese-lawyer.com/

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★