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Q CBD(カンナビジオール(Cannabidiol))オイルを海外から購入したのですが,大麻の成分が含まれていたらしく税関で輸入を差止められてしまいました。私は逮捕されてしまうのでしょうか。

よくあるご質問刑事事件

 詳しく事情をお聞きした上,税関等への対応が必要となるのか,必要な場合にどのような対応をすべきかを助言しますので,今すぐ刑事事件に詳しい弁護士と相談してください。
  理由は,次のとおりです。

 

 CBD(カンナビジオール(Cannabidiol))オイルは,インターネット上でも「リラックスし不安が軽減する。疼痛や不眠が改善される。」などの謳い文句で広く販売されており,数千円程度で気軽に手に入るようです。

 しかし,これまで日本国内で合法的なCBD製品として販売されていたものの中には,大麻取締法違反で輸入や所持が禁止されている大麻成分(THC:テトラヒドロカンナビノール(Tetrahydrocannabinol))が含有されていたことが判明し,厚生労働省がその商品の回収を呼びかける事態になったものもありました(厚生労働省ホームページ「大麻成分THCを含有する製品について」で公表されているので,興味のある方はそちらをご覧ください。)。
  CBDは,大麻取締法の規制対象から除外されている「大麻草の成熟した茎(以下,単に「茎」といいます。)」又は「大麻草の種子」(※1)から抽出・製造された製品であるという理由で,日本での所持や日本への輸入が合法とされているものです。
  しかし,茎や種子は,もともとは大麻草の一部ですから,CBDの抽出・製造の過程で,茎や種子だけを完全に選り分けることができず,規制対象とされている他の部分(葉,花穂,枝,根等)も混入してしまう可能性があります。
  そうした場合,製品化されたCBDに,規制対象とされている大麻草の他の部分(葉,花穂,枝,根等)の抽出成分(規制対象とされている大麻成分THC:テトラヒドロカンナビノール)が混入することになってしまう危険もあるのです。
  ですから,仮にCBDを購入したいのであれば,その抽出・製造の過程で,規制対象とされている大麻草の他の部分(葉,花穂,枝,根等)が混入しないような,徹底した製造管理や品質管理が行われているメーカーの製品を選ぶべきです。

 さらに,質問者のようにCBDを海外から直接購入(輸入)する場合には,格別の注意が必要です。
  厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部も,「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」というパンフレットをインターネット上に公開して,注意を呼びかけています。
  このパンフレットによると,CBD製品を輸入する場合は,輸入者自身が,輸入を行う際に,税関又は厚生労働省に必要な資料(製造元等から入手した証明書,成分分析表及び輸入するCBD製品の原材料及び製造工程の写真)を提出し,大麻に該当しないことの回答を得る必要があるとされています。
  その上で,これらの資料により,そのCBD製品が,①大麻草の茎又は種子以外の部位(葉,花穂,枝,根等)から製造・抽出されたものと判定されれば,その製品は大麻取締法違反の規制対象である「大麻」に該当するため,原則として輸入できないこと(つまりそれを輸入等すれば大麻取締法違反で処罰されるおそれがあること),②大麻草から抽出・製造されたかを問わず,大麻草由来の成分であるTHCを含有すると判定されれば,その製品は,「大麻」に該当しないことが確認できないため,原則として輸入できないこと,③化学合成されたTHCを含有すると判定されれば,その製品は,麻薬及び向精神薬取締法違反で規制される「麻薬」に該当するので,原則として輸入できないこと(つまりそれを輸入等すれば同法違反で処罰されるおそれがあること)が明記されています。
  ちなみに,大麻の輸入の法定刑は,営利目的があれば10年以下の懲役刑及び300万円以下の罰金刑,営利目的がなくても7年以下の懲役刑とされており,決して軽い罪ではありません。

 さて,質問者の場合,海外からCBDオイル(製品)を購入した「輸入者」に当たりますから,本来は,税関又は厚生労働省に上記資料を提出して,大麻に該当しないことの回答を得ておく必要がありました。
  しかし,それをしないままにCBDオイルを輸入してしまい,そこからTHC成分が検出されてしまったのですから,大麻取締法違反(輸入罪)の捜査対象となり,同法違反で逮捕・起訴されてしまう危険もある,と言わざるを得ません。
  この点,大麻取締法違反で規制対象とされる「大麻」の定義については,大麻取締法第1条(※1)の規定から,「大麻草」を原料として製造・抽出された製品に限定すべきと捉えられています。
  そのため,関東信越厚生局麻薬取締部のパンフレットでも,上記②のとおり,THCを含有しても大麻草由来か判別できないときには,「大麻に該当しないことが確認できない」グレーゾーンがあることが想定されているわけです。
  ですから,相談者が大麻取締法違反(輸入罪)で逮捕・起訴されるかを検討するに当たっては,まず,税関等が「オイルに含有するTHCが大麻草由来であること(大麻草を原料とすること)」を証明できる証拠を集められるかを,見極める必要があります(一般的には,製造過程の写真を見て,そこに撮影された原料とされるものに大麻草特有の剛毛が確認できるか否かがメルクマールになりますので,御相談を受けた際には,捜査機関がそのような資料を入手できる状況にあるかなども,お聞きすることになります。)。
  そして,質問者のようなケースの場合,これまでは,捜査機関が製造過程の写真等を入手できず,上記の点(大麻草由来のTHCであること)が確認できないため,刑事事件としては立件されず,または立件されても不起訴処分とされることが多かった印象があります。
  しかし,報道によれば,近時の電子タバコの普及に伴い,主に若者の間にTHCオイル類(リキッドやワックス)の濫用が蔓延しているとの問題意識から,厚生労働省麻薬取締部や警察庁が,この種事案に関する鑑定手法を見直し,THCを一定以上の濃度で含み特徴的な成分であると確認できれば,大麻草由来であることを「剛毛」等により確認できなくても「大麻」と判定するという,積極的な姿勢を打ち出しており,そういった手法に基づく起訴・有罪例も出ているようです。
  ですから,そういった捜査機関や裁判例の動向も踏まえつつ,対策を考える必要があります。

 そして,上記以外にも,薬物輸入事犯全般において検討すべきこととして,そもそもTHC含有の故意が認められる事案なのかという点についての見極めも必要になりますので,相談をお受けした際には,その点に関する事情も詳しくお聞きすることになります。
  法律事務所シリウスには,薬物事件の経験豊富な弁護士が複数在籍しておりますので,お気軽に御相談ください。

以上 

 

※1 大麻取締法第1条は「この法律で『大麻』とは,大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし,大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。」と規定しています。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★