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「罰金」と「科料」の違い

2021.11.15ブログ

刑法では,財産刑として,罰金(ばっきん)と科料(かりょう)が定められています。

科料は,1000円以上,1万円未満の範囲内で言い渡される刑です。法廷で,科料の刑が言い渡される例はほとんどなく,弁護士を20年以上していますが,科料の判決言い渡しを受けた経験はありません。科料が規定されている刑罰としては,例えば,侮辱罪があります(刑法第231条)。

(刑法第17条)
科料は,1000円以上1万円未満とする。

罰金は,1万円以上の金銭を支払わせる刑罰です。

(刑法第15条)
罰金は,1万円以上とする。ただし,これを減刑する場合においては,1万円未満に下げることができる。

罰金刑が規定されている場合,その金額の上限が定められています。例えば,傷害罪や窃盗罪では,「50万円以下の罰金」(刑法第204条,同235条)と定められています。刑法に定められている中で,罰金の最高額は,封印等破棄罪,わいせつ物頒布罪,贈賄罪の「250万円以下」(刑法第96条,同175条,同198条)ですが,覚醒剤取締法や廃棄物の処理及び清掃に関する法律等では,刑法で定められた罰金額よりも,はるかに高額の罰金額が定められています(例えば,覚醒剤取締法第41条では,営利目的で密輸した場合の罰金額を「1000万円以下」と定めています。)。

罰金刑が選択される場合は,通常の裁判ではなく,「略式手続」という簡略な手続で処理される事件も多いです。
また,懲役刑と異なり,罰金刑は,納付できれば自由が奪われることはありませんが,納付できない場合は,拘禁されて労働させられること(労役場留置)もあり得ますので,注意が必要です。

なお罰金については,「50万円以下の罰金の言渡しをうけたとき」に,刑の全部の執行猶予が付される余地がありますが(刑法第25条,ただし,実務では,罰金刑に執行猶予が付されることはほとんどありません。),科料については軽微な刑であることもあり,執行猶予の規定はありません。

これまで述べたとおり,罰金と科料は,同じ財産刑ですが,その金額が違うということになります。罰金刑の場合,法律が定めた上限の範囲内で,金額が決まることになりますが,犯情,示談・前科の有無等により,その金額が決まってきます。

なお,日本では,資力により,罰金刑の上限が変わることはありませんが,以前,フィンランドを旅していた時,フィンランドでは,交通違反でも,お金持ちであれば,罰金額も高くなると聞きました。どちらがより実質的に公平で,実効性があるシステムなのか,評価が分かれるところかと思います。

2021年9月   
弁護士 菅 野  亮 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★