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検察こぼれ話⑩ ~ラウンジB~

2021.04.09ブログ

2021年4月9日   
弁護士 金 子 達 也   

 

1 優秀な検事は,数年間海外に留学してその国の法曹資格を取ったり,その国の行政システム等について研究させてもらうことができました。
 そして,海外留学経験のある検事のポストとして,在外公館(大使館・領事館)の一等書記官などの仕事が任されることもありました。
 そのような検事は「国際派」と呼ばれていました。
 筆者は,徹頭徹尾「国内派」であり,留学経験もありませんし,もちろん在外公館で働いたことなどありません。
 そんなところで働けと言われても,困ってしまったでしょう。

2 そんな筆者が,検事時代に一度だけ味わった「国際」経験が,「アジ研」でした。
 アジ研は,正式名称を「国連アジア極東犯罪防止支援研修所(UNAFEI)」と言い,国連と日本国政府との協定に基づいて設立された国連の地域研修所です。
 その研修所は,現在,東京都昭島市内にあります。
 アジ研では,定期的に,犯罪防止に関する国際研修やセミナーを実施し,その研修員を極東地域の各国から招聘していたのですが,日本の若手検事もホスト役としてこの研修に参加することがありました。
 アジ研が実施する国際研修やセミナーでは,研修員が数ヶ月間にわたり共同生活を送るのですが,その際に,日本から参加した若手検事も一緒に学ばせてもらい,休日には,海外研修員を近場の国内観光などに案内していたのでした。
 ちなみに,筆者が参加したセミナーは,第3回汚職防止刑事司法支援研修というものでした。
 ここでは,各研修員が各国で担当した汚職事件等に関するレポートを叩き台に,汚職をなくすのにはどうしたら良いのかという議論が行われました。

3 ところで,当時,まだ東京の府中にあったアジ研の研修所には,ラウンジBという部屋がありました。
 アジ研には,研修員が集まれるラウンジが二つあり,そのひとつであるラウンジAは,研修員が食事をするラウンジ(食堂)でした。
 一方,ラウンジBというのは,海外からの研修員に日本文化に触れてもらうための施設とされており,和室もあって,希望者はここで着物の着付けや華道などの体験をしていたようです。
 とは言え,筆者にとっては,ラウンジBといえば「カラオケ」でした。
 当時,ラウンジBには最新鋭のカラオケマシーンが設置されており,夜になると,研修員がお酒や食べ物を持ち寄り,カラオケパーティが開かれていました。
 海外研修員の母国の経済状態は様々であり,日本ではリーズナブルとされている居酒屋の「飲み代」でさえ,皆が平気で出せる金額とは言い切れなかったため,研修所の外での「飲み会」は避けるように指導されていました。
 そして,その代替となる交流の場として,ラウンジBが開放されていたわけです。
 カラオケを「日本文化」というかには異論もあろうかと思いますが,筆者は,このラウンジBでのカラオケを通して,海外研修生ととても仲良くなれました。
 国際交流の在り方として,こういったソフトな交流は必要だったと筆者は考えています。
 なにより,とても良い思い出になりました。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★