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夫が交通事故を起こして逮捕されました。夫は当分,家に戻れず仕事にも行けないということでしょうか?

よくあるご質問交通事故

1 どうして逮捕されるのか
  交通事故を起こした相手が怪我をしたり死亡したりした場合,事故を起こした運転者(以下,単に「運転者」といいます。)は,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下,「自動車運転処罰法」といいます。)違反により罰金刑,懲役刑又は禁固刑が科される可能性があり,その際,酒気帯び運転等の道路交通法違反の事実も認められた場合には,道路交通法違反でも同様に処罰される可能性があります。そのため,たとえ交通事故であっても,捜査のために必要であるとして,逮捕されてしまう危険があります。
  実際に逮捕されるかどうかは,交通事故の結果の重大性や過失(不注意)の大小等の事故態様に加え,事故後に運転者が逃亡や証拠隠滅を企てたか否かなどの事故後の状況等から,運転者に「証拠隠滅や逃亡のおそれ」があると認められるかどうかによって判断されます。
  例えば,交通事故を起こしただけではなく,怖くなってその場から逃走してしまったような場合(ひき逃げ)には,罪証隠滅や逃亡のおそれが高いと判断されて逮捕されてしまう危険が高まりますが,事故現場から110番通報して怪我人等の救護にも努めていれば,逮捕される危険は相対的に低くなります。それでも,過失が大きく(著しい速度超過や赤信号無視等)結果が重大(複数の死者が出た場合等)であると認められた場合には,逃亡のおそれは否定できないと判断されて,逮捕されてしまうことがあるのです。
  そして,残念ながら,刑事訴訟法上,逮捕に不服申立をすることはできません。

2 早期釈放を求める方法について
  もっとも,逮捕によって運転者の身体を拘束できる期間は,原則約2日間であり,それ以上の身体拘束が必要な場合には,事件の送致を受けた検察官が裁判所に勾留請求し,それが裁判所から許可されなければなりません(刑事訴訟法204条等)。
  そこで,お尋ねのケースの場合,勾留請求やその前後のタイミングで,検察官や裁判所へ様々な働きかけをして,身柄拘束を解いてもらう活動が功を奏するかが,重要になります。
  以下,少し整理しながら,早期釈放を求める方法について紹介します。
⑴ 逮捕直後の警察官に対する働きかけ
  逮捕に不服申立をすることはできませんが,警察が,身柄拘束の必要なしと判断すれば,警察の判断で運転者が釈放されることもあります。
  ですから,例えば,早期に,被害者との示談ができてしまえば,その旨を警察官に伝え,警察の判断で釈放してもらうことがあり得ます。
  もっとも,実際問題としては,約2日間という短期間で示談が成立することは稀であり,そのような事情変更もないのに,警察が,一度逮捕した運転者を自らの判断で釈放することはあまりないので,警察官に対する働きかけは,あまり期待できるアプローチとは言い難いです。
  なお,稀ではあるものの,運転者に継続的な医療ケアが必要な持病(例えば透析が必要な腎臓病等)がある場合には,警察の判断で釈放されることもありますので,仮にそのような事情があれば,警察にその旨を伝えた方が良いです。
⑵ 勾留請求前の検察官に対する働きかけ
  過失や結果がそれほど重大ではなく,かつ,ひき逃げ等の事情も認められないような一般的な交通事故であれば,事件送致を受けた検察官が,事故を起こした運転者を勾留請求せずに釈放することが良くあります。
  というのも,過失や結果がそれほど重大ではない一般的な交通事故に関しては,警察は,検察官に事件を送致するまでの約2日間で,現場の実況見分や事故の痕跡の採取,更には事故前の運転者の行動に関する裏付け捜査等の必要な捜査を,ほぼ終えていることが多いことから,検察官が運転者を勾留請求するかどうかの判断要素としては,釈放した場合に逃亡のおそれがないかの点に重きが置かれるのが通常だからです。
  そこで,この段階で,釈放を座して待つのではなく,検察官に対し,例えば家族の身元引受書を提出したり,家族と検察官との面談を求めたり,更には,運転者が勤務先で責任ある仕事を任されていること(仕事を放り出して逃亡するなどあり得ないこと)等を疎明する資料を提出したりして,より積極的に,運転者を勾留請求しないよう説得するのが,早期に身柄拘束を解く現実的な方法と言えるでしょう。
⑶ 裁判官に対する働きかけ
  検察官が勾留請求してしまった場合には,勾留するかどうかを判断する裁判官に対し,上記事情等を説明して勾留を許可しないよう求めることになります。この場合は,上記同様の資料を集めて提出するとともに,運転者の弁護人(弁護士)が,裁判官に対し,勾留しないよう求める上申書を出すことが多いです。
  また,仮に裁判官が勾留を許可してしまった場合には,準抗告といって,勾留決定に対する不服申立を裁判所に行うことも可能ですが,準抗告申立書というテクニカルな処理を作成する必要があるため,これも運転者の弁護人(弁護士)がいなければ行動を起こし難しいと思います。
⑷ 寛大な終局処分を求める働きかけ
  残念ながら,裁判官が,検察官の勾留請求を却下したり,別の裁判官が認めた勾留を取り消したりするのは,あまり多くないとされるのが実情です。
そして,勾留が許可された場合には,通常,まずは10日間の身柄拘束が認められ,必要があれば更に10日間の身柄拘束が認められます(刑事訴訟法208条等)。
  そこで,勾留が認められてしまった場合には,この期間に,被害者との示談書を整えるなどして運転者の寛大処分を求め得る素材を集め,検察官に対し,起訴猶予や罰金などの寛大な処分を求める働きかけを続けていくことになります。

3 おわりに
  早期の身柄解放に向けて,どのような方法をとるのが効果的かは,事案によって異なりますので,実際には,信頼できる弁護士に相談しながら事を進めていくことになろうかと思います。
  交通事故は,自動車を運転する誰もが加害者になり得るものであり,運転者の身体拘束が長引けば失業の危険も伴います。仮に運転者が一家の大黒柱であった場合には,その家族を路頭に迷わせることにもなりかねません。
  そのような場合に,身体拘束からの早期解放だけではなく,運転者の勤務先への対応等の様々な法律問題に対し,適切なアドバイスを差し上げながら,運転者とその家族に寄り添っていくのが弁護士の仕事です。
  遠慮なくご相談ください。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★