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イギリス便り⑨~Tort Law(不法行為法)~

2020.08.31ブログ

イギリス法のTort Lawは、契約関係のない当事者間に生じた民事上の紛争に関する法分野で、日本法における不法行為法とほぼ重なる概念です。過失責任の原則や過失と損害の因果関係が必要とされる点など、基本的な考え方もイギリス法と日本法で共通しています。

 ただし、イギリス法におけるTort Lawは、判例法を基礎として発展してきたため、不法行為責任を全体的に規律する成文法は存在しません。一般的な過失(negligence)に基づく責任の他、使用者責任(employer liability)や占有者責任(occupier liability)など、異なる類型ごとの判例法によりルールが形成されている点が、イギリス法の大きな特徴といえます。

 また、イギリス法では、精神的損害(psychiatric injury)や純粋な経済的損害(pure economic loss)など、特定の損害が問題になる事案においては、判例法により不法行為責任の要件が狭く限定されています。なお、psychiatric injuryに関するリーディングケースは、「ヒルズボロの悲劇」と言われるフットボールスタジアムでの大規模な死亡事故の遺族等が原告となったものです。

弁護士 中井淳一

 

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