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境界紛争の解決方法について

2020.05.22ブログ

1 「境界」に関する紛争とは
 「境界」に関する紛争として,典型的なものは,隣地との境界がはっきりしないので,「境界」をはっきりさせて,境界標(杭)を敷設したいといったものです。あるいは,どうも隣地所有者のブロック塀が越境しているのではないか,そうだとしたら正しい位置にブロックを設置し直して欲しいといったものもあります。
 「境界」に関する紛争は,不動産を売却する際に,「境界」明示が問題となることから顕在化することが多いですが,相続した不動産を調査したら「境界」が曖昧であったりすることもあり,様々な場面で顕在化します。

2 「境界」とは
 「境界」といっても,法律上,その概念は1つではありません。
 公法上の境であり,当事者が合意等で自由に処分できない「境界」を「筆界」(ひっかい)といいます。
 同じく「境界」と呼ばれているもので,当事者が合意等で自由に処分できる所有権の境のことを「所有権界」(しょゆうけんかい)といいます。
 もともとは,「筆界」も「所有権界」も同じ線(境)です。古くからある「境界」は,明治時代の地租改正作業により引かれたものですし,土地を分筆する際に引かれる「境界」もありますが,もともとは「筆界」と「所有権界」は同じ位置に存在します。
 しかし,当事者が合意等により動かすことのできない公法上の境である「筆界」と異なり,「所有権界」は,土地を一部譲渡したり,土地の一部が時効取得されたりすることにより,移動することがあります。
 そうして,「筆界」と「所有権界」がずれてしまうこともあり得ます。

3 「境界」に関する紛争解決の難しさ
 「境界」に関する紛争解決の難しさの原因の1つは,「境界」に関する精度の高い資料が乏しいことにあります。
 例えば,土地の形状等を把握するものとして法務局には「公図」が備え付けられていますが,測量技術が発達していない時代の「公図」は,精度としてはあまり高くありません。「公図」の形状等は参考とはなりますが,「公図」だけを頼りに,「境界」を復元することは難しいことが多いです。
「境界」に関して,「隣地との境に○○の木が植えられていたが,現在はない」,などという話もよくあります。そのような場合,古い時代の航空写真などを見ながら,「境界」の探求をしていくことになりますが,写真等では,「境界」がはっきりしない場合もありえます。
 また,「境界」に関する紛争解決の難しさは,その手続が多数あることも原因です。
 「境界」に関する紛争解決のための法的手続について次項で説明します。

4 「境界」紛争解決のための法的手続

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紛争が生じた場合,話合いによる解決が基本です(ただし,「筆界」は,当事者が合意により決めることはできず,「筆界確認書」は,ここに「筆界」があると当事者が考えていることを表示する書類に過ぎません。)。
 話合いによる解決ができなかった場合,上記のように,「筆界」については,法務局の筆界特定制度,あるいは筆界確認訴訟により解決することになります。
 「所有権界」については,弁護士会や土地家屋調査士会が運営しているADR(裁判外で法的紛争を解決する仕組みです。),あるいは所有権確認訴訟により解決することになります。
 なお,筆界確認訴訟と所有権確認訴訟は,本来は,別個の事項について判断を求めるものですが,同時に訴えることができますので,実際は,1回の裁判で解決することができます。
 どのような法的制度を使うことがベストなのかは,事案によります。
 例えば,古くからブロック塀などが越境している事件では,「筆界」が判明して,越境していることが分かっても,それだけでは越境したブロック塀の撤去を求めることはできません。そもそも,筆界が判明して越境していることが分かっても,相手から,そのブロック塀があるエリアまで,土地を時効取得したとの主張がなされることも多いです。
 ブロック塀の撤去まで求めたいのであれば,「所有権界」の確認をして,同時に,所有権に基づく妨害排除請求として,ブロック塀の撤去を求める必要があります。

 どのような手続で当該紛争を解決するべきかについては,境界紛争に関する専門的知見が必要です。そのようなお悩みについては,ご相談下さい。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★