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菅野亮弁護士が,土地家屋調査士会松戸支部で研修の講師を担当しました

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当事務所の菅野亮弁護士が,千葉県土地家屋調査士会松戸支部で,「境界紛争解決の実情と課題」について研修講師を担当しました。
 当事務所においては,境界紛争に関する交渉だけでなく,筆界特定,筆界確定訴訟,境界に関する民事調停,土地家屋調査士会のADR(境界紛争解決センターちば),所有権確認訴訟などの法的手続を通じた境界紛争の解決を行っています。
 多くの場合,事件処理に関して,土地家屋調査士の先生方とは連携することも多いです。 しかし,土地家屋調査士の先生が測量等を誤って実際の筆界,所有権界と異なる図面を作成した結果,当事者がその図面を正しい筆界等だと誤認して,「筆界確認書」を取り交わしたケースなどでは,当該調査士の先生の責任問題が発生することもあり,研修では,菅野弁護士が担当した事件の裁判所の判示などを紹介して,調査士の先生方がトラブルに巻き込まれることがないような注意喚起もさせていただいております。
 なお,菅野弁護士が担当した事例で,調査士の先生が間違った筆界を前提にした図面を作成し,それを前提に「筆界確認書」を作成したケースで,錯誤無効が認められるとした事例があるので紹介させていただきます。

【東京高裁平成29年10月19日判決】(公刊物未登載)
「控訴人らとAは,中立的な専門家である土地家屋調査士が測量した結果に基づき既に埋設されていたコンクリートの各境界杭につき,改めて立ち会った土地家屋調査士からそれぞれが正確な筆界点であるとの説明を受け,これが本件筆界合意の前提になっていたということができるから,争いの目的そのものではなく,その前提事実に錯誤があるというべきである。また,Aにおいて,上記の錯誤がなければ,本件土地1の主要な部分を占める本件係争地の所有権を失う結果となる本件筆界合意をしなかったと認められるから,意思表示の主要な部分に錯誤があり,これは要素の錯誤に該当するというべきである。
 したがって,Aの上記錯誤には,和解の確定効(民法696条)は及ばず,承継人である被控訴人は,本件筆界確認合意の錯誤無効を主張することができる(最高裁昭和33年6月14日第一小法廷判決・民集12巻9号1492頁参照)。
 これに対し,控訴人らは,昭和47年の測量から既に45年経過していること,周辺の土地に影響を及ぼすこと,Aは,2回にわたり,本件土地1と本件土地2及び本件土地3との境界を確認していることから,被控訴人の錯誤無効の主張は,信義則に反して許されない旨主張する。しかし,上記錯誤は,本来,専門家として字辻公図及び字名代公図等の資料をも十分検討し,正確に測量することが期待されている土地家屋調査士が誤認して測量したことに起因するものであり,同誤認につき,A及び控訴人らに責任がないこと,昭和47年地積測量図及びこれに基づく他の測量図並びに現地のコンクリート杭が誤っていることは,専門家でない限り,容易に分からないこと,控訴人らの所有する土地2及び本件土地3以外の周辺の土地に具体的な影響があることを認めるに足りる証拠はないことに鑑みると,控訴人らの主張する事情をもって錯誤無効の主張が信義則に違反するとはいえない。」

 

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★