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菅野亮弁護士が田岡直博弁護士と「責任能力」に関する研修の講師をしました

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日弁連刑事弁護センター・責任能力小委員会から派遣され,田岡直博弁護士とともに,東北弁連主催の「責任能力が問題となる事件の刑事弁護」と題する研修を実施しました。
責任能力に関する刑事弁護の研修で各地を回っておりますが,今回は,東北弁護士連合会の主催だけあって,参加者が100名を越える盛況な研修となりました。

事件を争うかどうかは別として,事件を起こした被疑者・被告人が何らかの精神障害をかかえていること,そして,精神障害が事件に関係していることが少なくありません。
今回の研修では,責任能力問題に関するエキスパートの田岡弁護士とともに以下の3部構成で研修を実施しています。

Ⅰ 責任能力の基礎
Ⅱ 弁護活動のポイント
Ⅲ ケース・スタディ

責任能力については,その考え方や判断基準に関する多数の最高裁判決があります。
古くは,心神喪失・耗弱の意義を判じた大判昭和6年12月3日(刑集10巻12号682頁)から,判断方法を述べた最決昭和59年7月3日(刑集38巻8号2783頁),そして,近年でも,鑑定の信用性評価に関して判じた最判平成20年4月25日(刑集第62巻5号1559頁)などです。

もっとも,判例の知識だけでは責任能力が問題となる事案に対応できません。
DSM-5,ICD-10といった操作的診断基準や,多くの鑑定人が参照している『刑事精神鑑定の手引き』などに関する知識も一通り必要となります。私も田岡弁護士も,司法精神医学会の会員で,学会の司法精神鑑定ワーク・ショップなどを傍聴して勉強しています。
多くの事件で,精神科医にも相談することが多いですが,基本的な医学知識の習得も必要となるだけに,幅広い知識が要求される難しい事件類型となります。

今回の研修ではそうした基礎編に加え,弁護実践をどうするかについてを第2部で説明し,第3部では,平成28年に当事務所の弁護士が担当し,心神喪失を理由として無罪となった2件の裁判員裁判(東高判平成28年5月11日及び千葉地判平28年12月20日)を素材にケース・スタディ形式で起訴前鑑定を弾劾する弁護活動等を報告しました。

一見難しくみえる責任能力が問題となる事件ですが,大事なのは,「どこかおかしいな」と思う素朴な感性や,適切な精神医学的知識を専門家から得ることです。
今後も各地でこうした研修を実施し,あるべき弁護活動について検討したいと思っています。