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「法廷弁護技術」研修③ 主尋問とその講評1

2008.07.03ブログ

報告者 菅 野

NITA研修のスタートは,NITAで教える指導法の理論と実践です。
そして,最初のテーマは主尋問でした。

主尋問において気をつける重要なポイントは以下のような点です。

・オープンエンドの質問を使う (×誘導尋問 )
・単に「次に何が起こったの?」式の質問は避けよう
・短い質問
・大事な部分ではゆっくりと
・重要な点は,繰り返しとルーピング
・複合的な質問を避ける(一つの質問で一つの事項を聞く)
・法律家特有の言葉を避けよ  Etc

このようなルールは日本の法廷においても非常に参考になるものです。
例えば,重要な場面で,弁護人の私が,証人に対して,「Aさんの洋服が白い」点を聞くために,主尋問としてこうきいたとしましょう。

弁護人「あなたは,その時のAさんが白いTシャツを着ていたのを見ましたか?」
証人 「はい。」

これは,仮に検察官から異議が出なかったとしても成功とは言えません。
なぜなら,証人は,弁護人の質問によって既に答えを与えられ,誘導され,「はい」と言っているだけだからです。
また,証人が,そもそもAさんを見ていないとすれば質問が誤導ですし,目撃状況が洋服の色を識別できない状況かも知れないのに,目撃状況抜きにして,このような質問をすること自体,証言の基礎がないということで異議の対象になり得るものです。
陪審であれ,裁判員であれ,そのような質問では,答えが「はい。」だったとしても,その証言の信用性に疑問を持つこともあり得ます。

例えばこの質問をちょっと工夫して以下のようにするとします。

弁護人「あなたは,その時,誰かを見ましたか」
証人 「Aさんを見ました」
弁護人「Aさんとあなたの距離はどのくらいでしたか」
証人 「だいたい3メートルくらいでした」
弁護人「現場は,どのくらいの明るさでしたか」
証人 「まだ,5時過ぎで,日も沈んでいなかったので明るく,Aさんのことは良く見える状況でした」
弁護人「Aさんはどのような服を着ていましたか」
証人 「上はTシャツで,下はジーパンにスニーカーを履いていたと思います」
弁護人「Aさんが着ていたTシャツの色は何色ですか」
証人 「白い色でした」

この質問は,全て①オープンエンドの質問,②一つの事実を聞く質問で組み立てています。
聞いている人にとっては,リアルなイメージが伝わるのではないでしょうか?

「主尋問では,『証人に語らせる」』という大原則があります。
誘導尋問ではなく,一つの事実を聞いていくことで,証人が法廷で自分の体験したことをリアルに語れるのです。

さて,NITA研修の中身を書きましたが,実はここまでは,単なる前提です。
今回の研修は,そのような理解を前提に,いかに法廷弁護技術を指導するかという指導法が研修の中身です。
次回は,いよいよNITAの「指導法」について報告したいと思います。
以 上