犯罪白書を読んでみよう① ~検挙率・暗数・体感治安~
2026年2月
弁護士 金 子 達 也
1 犯罪白書
犯罪白書は、毎年法務省が発表している公刊物です。
法務省のホームページでは「刑事政策の策定とその実現に資するため、それぞれの時代における犯罪情勢と犯罪者処遇の実情を報告し、また、特に刑事政策上問題となっている事柄を紹介する白書」と紹介されています。
筆者が検事に任官した1994年当時は、紙の冊子で購入するしかありませんでしたが、最近は法務省のホームページで公開されていますので、スマートフォン等で気軽に見ることができます。
そこで、皆さんにも犯罪白書に興味をもっていただけたらと思い、犯罪白書の中身を紹介してみることにしました。
今回は、法務省のホームページで公開されている「令和6年版 犯罪白書の概要」を見ながら、「検挙件数」と「認知件数」の違いや、これらの数字から見えてくる「検挙率」、「暗数」、「体感治安」の言葉の意味等について解説します。
なお、この記事では「令和6年版 犯罪白書の概要」のことを、「R6版概要」と略して紹介します。
2 検挙率とは
R6版概要の冒頭に「検挙件数」「認知件数」という言葉がでてきます。
「検挙件数」は警察等の捜査機関が犯罪事件を摘発した件数、「認知件数」は警察等の捜査機関が犯罪事件として把握した件数を、それぞれ指す言葉です。
例えば110番通報等により警察が犯罪捜査を開始した場合、当該犯罪が事件として「認知」されたと言います。そして、その後に犯人が逮捕された場合に当該犯罪が「検挙」されたと言うわけです。
R6版概要を見ると、詐欺窃盗などの刑法犯罪の認知件数が70万3351件(令和5年)であったのに対し、刑法犯罪の検挙件数は27万0269件に止まっていることがわかります。
「検挙率」というのは、認知件数に対する検挙件数の割合を百分率で表した数値のことを言いますので、上記数字を検挙率で表すと約32%となります。
このように、刑法犯だけを見た場合、実際に認知された犯罪のうち約32%の犯人しか検挙されていないという計算になります。
逆に言えば、刑法犯の被害者のうち約7割は、例え被害申告をしても犯人を検挙してもらえず「泣き寝入り」を強いられているということになります。
3 暗数とは
「暗数」というのは、犯罪統計で把握されていない犯罪事件と統計上の数値との差を言います。
例えば特殊詐欺の被害者が、どうせ捕まえてもらえないだろうと考え、警察に被害申告さえすることなく泣き寝入りしてしまった場合、その犯罪は警察に認知されず、結果、犯罪統計には全く反映されないことになってしまいます。
暗数は、性犯罪や家庭内の暴力犯罪(DV(ドメスティックバイオレンス))において特に顕著であり、被害者が種々の事情から警察に被害を訴えることができない状況におかれてしまうことが多い結果、実際に起きた犯罪が「暗数」として闇に葬られてしまうのです。
そのため、犯罪対策や刑事政策を行う場合、統計上の数字に着目するだけではなく、この暗数の存在も踏まえておく必要があるとも言われています。
4 体感治安とは
「体感治安」というのは、人々が主観的・感覚的に『治安が良いか悪いか』を感じることを意味します。
体感治安は、統計上の数値と直接紐付くわけではないものの、検挙率が悪ければ体感治安も悪くなるという関係にあります。
最近では『トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)』による詐欺等被害が大きな社会問題となっていますが、こういった犯罪グループが検挙されないままでいる社会は、体感治安も悪くなるという関係にあるわけです。
ですので、警察などの捜査機関は、この種の犯罪の摘発に力を入れ、時には大きなキャンペーンを打って、検挙率の向上を目指しているわけです。
次回は、戦後日本の検挙率の推移についてご案内します。
以上
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★




