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イギリス契約法紹介②~約因(Consideration)~

2026.02.17ブログ

 

 イギリス法上、申込と承諾により有効に成立した契約について、法的に強制可能な合意とみなすためには、「約因(consideration)」が存在することが求められています。「約因」の概念は、いわゆる大陸法に由来する日本の契約法には存在せず、英米法に特有の法概念と考えられています。
 伝統的な判例法上の定義に基づけば、「約因」が認められるためには、成立した契約の下で、一方当事者が不利益を被り、他方当事者が利益を享受することと考えられています。典型的な売買契約を例に取ると、買主が代金を支払うという経済的な不利益を被る一方で、売主がそれを受け取るという点で、「約因」が認められることになります。

「約因」の解釈として、「約因はsufficientでなければならないが、adequateである必要はない」と考えられています。sufficientとadequateという語は、通常の日本語訳では、両方とも「十分な」という訳が当てられますが、実際にはニュアンスの違いがあり、ここでのsufficientという語は、「かろうじて足りる」というような意味で使われています。
 つまり、「約因」は、「かろうじて足りる」ようなものでも良いとされており、判例上、1ポンドの支払が「約因」と認められたこともあります。
 
 また、「約因」は、「ある程度の経済的価値(some economic value)」を持たなければならないと考えられています。
 ただし、これも実質的な基準は低く、判例では、チョコレートバーの包み紙でもそうした経済的価値があると考えられています。

 以上のように、「約因」の概念は、理論的には興味深い点も多く含みますが、実務上は、贈与契約のような場合を除いて、あまり契約の有効性に影響を及ぼさないことが多いと考えられます。

 前の記事:イギリス契約法紹介①~申込と承諾(Offer&Acceptance)

 

※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。

 

弁護士/英国弁護士 中井淳一
https://japanese-lawyer.com/

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★