改正刑事訴訟法(2025年5月15日施行)②「拘禁刑以上の刑に処する判決を受けた者に対する出国制限制度」
2025.10.14ブログ
2025年10月
弁護士 虫本良和
2023年(令和5年)5月に改正された刑事訴訟法(令和5年5月17日公布)によって、公布から2年以内に施行予定とされていた「出国制限制度」という新たな法制度が、2025年(令和7年)5月15日から施行されています。
この制度は、拘禁刑(「懲役刑」及び「禁錮刑」に変わる新しい刑罰として、2025年6月1日から施行されたものです。)や罰金刑の裁判(略式命令を含む。)を受けた者に対して、裁判所が、刑罰の執行を免れることを防ぐ目的で、海外への出国を制限できるという制度です。
罰金刑の裁判を受けた者等に対する出国制限制度の概要は以下のとおりです。
なお、「拘置」という用語は、これまでも刑法の条文(第12条2項「拘禁刑は、刑事施設に拘置する。」等)には用いられていましたが、刑事訴訟法には、今回の改正前には存在しませんでした。
●罰金刑の裁判の告知を受けた者及びその後罰金刑の裁判が確定した者に対する出国制限制度の概要(同345条の2乃至345条の4、同494条の2乃至494条の13)
・裁判所は、罰金の裁判(執行猶予付きは除く。)の告知を受けた被告人につき、勾留状を発する場合を除き、裁判確定後に「罰金を完納することができないこととなるおそれがあると認めるとき」は、検察官の請求又は職権で、裁判所の許可を受けなければ本邦から出国してはならないことを命ずるものとする。 被告人が保釈中(勾留執行停止中)の場合に、罰金の裁判確定後に「罰金を完納することができないこととなるおそれがあると認めるとき」も同様とする(同345条の2)。 |
・拘禁刑以上の刑に処する判決を受けた者に対する出国制限制度の各規定(同342条の3乃至同条の8)の準用(同345条の3) |
・裁判所は、出国制限の理由がなくなったと認めるときは、検察官、決定を受けた者、弁護人、親族等の請求又は職権で、当該決定を取り消さなければならない(同345条の4) |
・罰金の裁判が確定した場合、上記出国制限の規定が準用される(同494条の2乃至494条の4)。 |
・罰金の裁判を受けた者が、出国許可を受けないで出国し、出国許可が取り消され、又は正当な理由なく指定期間内に帰国等しなかった場合、当該判決が確定した後、30日を経過するまでの間、刑事施設に「拘置」できる(同494条の5)。 |
・拘置は、出国制限の決定を受けた者に対して「理由を告げこれに関する陳述を聴いた後」でなければできない(逃亡した場合を除く。)(同494条の6)。 |
・拘置は「拘置状」を発して行う(同494条の7)。 |
・拘置の決定は、決定を受けた者が指定する法定代理人や親族等の1名に通知しなければならない(同494条の8)。 |
・拘置の執行停止をされた者が、指定された日時場所に出頭しない場合や、指定された住居を離れ帰着しないときは、2年以下の拘禁刑に処する(同494条の9、同494条の10)。 |
・拘置の日数は、留置1日の割合に相当する金額に換算し、全部本刑に参入する(同494条の13)。 |
※「改正刑事訴訟法(2025年5月15日施行)①「拘禁刑以上の刑に処する判決を受けた者に対する出国制限制度」」はこちら
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より(千葉県 刑事弁護 弁護士)★