お知らせ・ブログnews & blog

千葉県千葉市の弁護士事務所 法律事務所シリウス > お知らせ・スタッフブログ > ブログ > 改正刑事訴訟法(2025年5月15日施行)①「拘禁刑以上の刑に処する判決を受けた者に対する出国制限制度」

改正刑事訴訟法(2025年5月15日施行)①「拘禁刑以上の刑に処する判決を受けた者に対する出国制限制度」

2025.10.07ブログ

2025年10月
弁護士 虫本良和

 

 2023年(令和5年)5月に改正された刑事訴訟法(令和5年5月17日公布)によって、公布から2年以内に施行予定とされていた「出国制限制度」という新たな法制度が、2025年(令和7年)5月15日から施行されています。

 この制度は、拘禁刑(「懲役刑」及び「禁錮刑」に変わる新しい刑罰として、2025年6月1日から施行されたものです。)や罰金刑の裁判(略式命令を含む。)を受けた者に対して、裁判所が、刑罰の執行を免れることを防ぐ目的で、海外への出国を制限できるという制度です。
 関連する条文は多岐にわたりますが、まず、拘禁刑以上の刑に処する判決を受けた者に対する出国制限制度の概要は以下のとおりです。

 

拘禁刑以上の刑に処する判決を受けた者に対する出国制限制度の概要(刑訴法342条の2乃至342条の8、同403条の3、同469条、同483条の2及び同485条の2等)

・拘禁刑以上の判決(※全部執行猶予付きの判決は除く(同96条4項))を受けた場合、裁判所の許可を受けなければ本邦から出国してはならない(同342条の2)。
・判決を言渡された者(被告人)、弁護人、親族等は、出国許可の請求ができる(同342条の3)。
・裁判所は、「出国することを許すべき特別の事情」を認めるとき、期間を指定して出国許可決定をする。裁判所は、許可の判断に際して、「期間内に本邦に帰国せず又は上陸しないこととなるおそれの程度」や「出国(略)できないことによりその者が受ける不利益の程度その他の事情」を考慮する。
 裁判所は、決定に際し検察官の意見を聴かなければならない。
 裁判所は、期間の「延長」及び「短縮」ができる(同342条の4)。
・裁判所は、出国を許可する場合、「帰国等保証金額」を定めなければならない(※保釈許可中の被告人は除く。)。
 帰国等保証金額は、「判決に係る刑名及び刑期、当該判決の宣告を受けた者の性格、生活の本拠及び資産、その者が外国人である場合にあってはその在留資格の内容その他の事情」を考慮し、「指定される期間内に本邦に帰国し又は上陸することを保証するに足りる相当な金額」とする(同342条の5)。
 裁判所は、出国を許可する場合「渡航先(の)制限」や「その他適当と認める条件」を付することができる(同342条の5)。
・裁判所は、出国を許可された者が、入管法の定める収容令書、退去強制令書の発付や監理措置決定を受けたときは、決定で当該許可を取り消さなければならない。
 裁判所は、出国を許可された者が、「正当な理由なく指定期間内に本邦に帰国せず又は上陸しないと疑うに足りる相当な理由」があるときや、「渡航先の制限その他裁判所の定めた条件に違反」したとき、検察官の請求又は職権で、許可を取り消すことができる。
 許可を取り消す場合、裁判所は、帰国等保証金の全部又は一部を没取することができる(同342条の7)。
・裁判所は、出国許可を受けないで出国し、出国許可が取り消され、又は正当な理由なく指定期間内に帰国等しなかった場合、検察官の請求又は職権で、当該被告人に勾留状が発せられていない場合には勾留決定を、当該被告人が保釈(勾留執行停止)されている場合には保釈(勾留執行停止)取消決定ができる(同342条の8)。
・拘禁刑以上の刑が確定した場合、上記出国制限の規定が準用される(同483条の2)。
・拘禁刑以上の判決を受けた者が、出国許可を受けないで出国し、出国許可が取り消され、又は正当な理由なく指定期間内に帰国等しなかった場合、当該判決が確定した後、収容状の発付ができる(同485条の2)。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★