イギリスの郵便局えん罪事件
近時、イギリスの郵便局をめぐるえん罪事件(Post Office Scandal)が広く報じられており、イギリス史上最大規模のえん罪事件と言われています。
イギリスでは、郵便局を運営する公的企業が、Sub-Post Officeという形で地元の商店などに郵便業務等の運営を委託しています。今回のえん罪事件では、委託先を運営するSub Postmasterと呼ばれる人たちが、1999年以降に会計上の不正などを理由に次々と訴追され、誤って有罪判決を受けています。
2025年7月8日、このえん罪事件に関する報告書の一部(Post Office Horizon IT Inquiry Report Volume 1)が公表されました。
同報告書によれば、誤った有罪判決により、約1000人が誤って訴追されて有罪判決を受け、そのうち少なくとも13名の方が、自ら命を絶ったとされており、えん罪が引き起こした結果は非常に重大なものでした。
今後、Volume 2以降の報告書が順次公表され、えん罪発生の原因等について、精密な検討が行われていくことになると考えられます。
日本での刑事裁判実務に当たっても、他国でのえん罪事件から学ぶことは多いと考えられるため、今後も、Post Office Scandal の動向は注視していきたいと思います。
弁護士/英国弁護士 中井淳一
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★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★