性的姿態撮影等処罰法が禁止する行為と法定刑
弁護士 菅 野 亮
令和5年6月16日、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「性的姿態撮影等処罰法」といいます。)が成立し、同年7月13日から施行されています。
1 性的姿態等撮影罪
性的姿態等撮影罪の法定刑は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。
「性的姿態等」については、法律で次のように定められています。
○人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下において同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分 ○上記に掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態 |
性的姿態等撮影罪は、正当な理由がないのに、ひそかに、性的姿態等を撮影した場合に成立する犯罪となります。性的姿態等を撮影することについて、正当な理由がある場合とは、法務省のQ&Aでは、「医師が、救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールに従って撮影する場合などが考えられる」とされています。また、性的姿態等撮影罪は、16歳未満の者に対する撮影行為も処罰されますが、16歳未満の者に対する撮影行為について正当な理由がある場合として、「親が、子どもの成長の記録として、自宅の庭で上半身裸で、水遊びをしている子どもの姿を撮影する場合」や「地域の行事として開催される子ども相撲の大会において、上半身裸で行われる相撲の取組を撮影する場合」などが例示されています。
性的姿態等撮影罪は、正当な理由がないのに、ひそかに撮影する場合に成立する犯罪ですが、以下の場合にも、性的姿態等撮影罪が成立します。
○同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせ、又はその状態にあることを利用して撮影する行為 ○誤信をさせ、又は誤信をしていることを利用して撮影する行為 ○正当な理由がないのに、16歳未満の者を撮影する行為(13歳以上16歳未満の場合、行為者が5歳以上年長の者であるとき。) |
2 性的姿態等撮影罪以外の犯罪行為と法定刑
性的姿態撮影等処罰法では、撮影だけでなく、次の行為も処罰されます。不特定・多数の者を対象に、性的姿態等を提供したり、送信した場合には、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金となります。
○性的映像記録提供等罪 ・性的姿態等の画像(性的映像記録)を特定・少数の者に提供 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 ・性的映像記録を不特定・多数の者に提供又は公然と陳列 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金 ○性的映像記録保管罪 ・提供又は公然陳列の目的で性的映像記録を保管 2年以下の懲役又は200万円以下の罰金 ○性的姿態等映像送信罪 ・不特定・多数の者に、性的姿態等の映像を送信 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金 ○性的姿態等映像記録罪 ・送信された性的姿態等の映像を、そのようなものであると知りながら記録 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 |
なお、性的姿態等の撮影を行う行為は、これまでどおり、各都道府県の迷惑防止条例や、児童買春等処罰法違反となる可能性もあります。
以上
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★