AI利用に関するイギリス裁判所のルール
近時、様々な分野でAIの利用が進んでおり、法律分野も例外ではありません。
AIを業務に利用する弁護士も増えていると考えられ、業務の効率化には有用な面があることは否定できません。一方で、アメリカでは、AIが作出した虚偽の判例が引用された弁護士作成の書面が裁判所へ提出されたケースが報道されるなどしており、弁護士業務におけるAI利用の問題も生じてきています。
現時点で、日本では法律業務におけるAI利用に関する明確なルール等は定めらておりません。
イギリスでは、裁判官の業務におけるAI利用について、2023年12月に「ガイドライン」が定められています。
(英国最高裁判所:AI利用に関するガイドライン)
https://www.judiciary.uk/wp-content/uploads/2023/12/AI-Judicial-Guidance.pdf
このガイドラインでは、現時点でのAIの限界や問題点、最終的な責任はAIを使用した裁判官が持つことが明記されています。
その上で、例示として、文章の要約やプレゼンテーションの作成にはAI利用が有用な場合があるとする一方で、法的調査や法的分析にAIを利用することは推奨されないとされています。
法律業務におけるAI利用の活用と限界について、参考になる1つの見解といえます。
今後、弁護士業務へのAI利用の範囲も拡大していくことが考えられますが、プライバシーの問題などもあり、どこまで利用範囲を拡大できるのかという点については、慎重な検討が必要になりそうです。
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
弁護士/英国弁護士 中井淳一
https://japanese-lawyer.com/
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★