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不法残留及び不法残留者を雇用等した場合の刑罰

2025.04.22ブログ

2025年3月

弁護士 菅 野  亮

 

1 不法残留した場合の刑罰

 外国人が、不法残留した場合、出入国管理及び難民認定法70条1項5号違反の容疑で逮捕、勾留され、刑事裁判を受けることになります。

(出入国管理及び難民認定法70条1項5号)

五 在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第二十条第六項(第二十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定により本邦に在留することができる期間を含む。)を経過して本邦に残留する者

 千葉県でも、技能実習生が多数働いていますが、就業先から逃げてしまい、そのまま技能実習生としての在留期間が経過してしまうと、在留期間経過後は、不法残留となり、日本にいること自体が犯罪となってしまいます。

 

2 不法残留の量刑

 日本国内の前科がなく、不法残留のみが問題となるケースであれば、不法残留の期間にもよりますが、執行猶予付の判決が得られることが多いです。
 たとえば、数年の不法残留のケースでは、懲役2年、執行猶予3年などの判決となる場合が多いように思われます。
 判決では、借金の有無や不法残留になった経緯等はあまり有利に考慮されることはありません。
 有利な事情として指摘される事情は、不法残留期間が短ければその点と日本国内で前科がないことや反省していることです。
 執行猶予付判決が出されると、法廷で待っている出入国在留管理庁の職員が、当該外国人を収容施設にそのまま連れて行き、退去強制手続が開始されます。

 

3 不法残留している外国人を雇用した場合の罪

 不法残留している外国人も、実際に、アルバイト等で収入を得ていることがあります。
 外国人が不法残留状態で働いても、そのこと自体は、犯罪ではありません。
 しかし、不法残留している外国人を雇った企業は、出入国管理及び難民認定法73条の2の不法就労助長罪に問われることがあり、注意が必要です。刑罰も、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金ですから、決して、軽い罪ではありません。

(出入国管理及び難民認定法73条の2の条文)
第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

 裁判例でも、会社の業務に関し、不法に本邦に残留するベトナム国籍を有する外国人を、被告会社の派遣労働者として他社に派遣し稼働させて報酬を受ける活動に従事させた事案で、会社の代表者について、懲役10月、執行猶予3年、罰金50万円、会社について罰金50万円とされた事案があります(名古屋地判令和2年10月14日)。
 外国人を雇用等する場合、その身元や在留資格・在留期間についても確認することが必要となります。警視庁のホームページにおいても、「外国人を雇用する際は、在留カード、旅券(パスポート)の提示を求め、在留資格・期間、在留期限、資格外活動許可の有無等を確認するなどして、雇用することができる外国人であるかを確認してください。」などと記載されています。

以上

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★