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コラム 改正少年法施行③「特定少年に関する原則逆送事件の拡大」

2022.05.27ブログ

弁護士 虫 本 良 和 

 

 2022年(令和4年)4月1日から施行されている改正少年法の主な改正ポイントとして、18歳・19歳の「特定少年」(コラム 改正少年法施行②「18歳・19歳に対する少年法の適用」参照)について、いわゆる「原則逆送事件」の対象が拡大されたということが挙げられます。

 

「逆送」とは、少年事件の審理(少年審判)を担当する家庭裁判所が、事件について、成人の刑事事件を扱う検察官に送る(送致)ことをいいます。

少年事件でも、捜査段階までは成人とほぼ同様の捜査が行われ、その後、検察官が事件を家庭裁判所に送致するという流れになります。ただし、事件の送致を受けた家庭裁判所が、一定の重大事件について、成人と同様の刑事処分が相当であると判断した場合等には、再び検察官に事件を「送り返す」(逆送)ことができるとされています(少年法20条1項)。

 その上で、少年法は、本改正の前から、「16歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪の事件」については、特別な理由がなければ、検察官に逆送しなければならない事件(「原則逆送事件」)とされていました(少年法20条2項)。

 

 今回の法改正により、「特定少年」については、この「原則逆送事件」の類型が、「死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件」まで拡大されることとなりました。

 具体的には、これまで対象外であった強盗罪、強制性交等罪、組織的詐欺罪(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条)等についても、原則として成人と同様の手続(刑事裁判)で処分が決められることとなります。

 

 この点、例えば、強盗罪は、刃物等の危険な凶器を用いるなどする悪質なケースもありますが、実質的には「万引き」事件と大差が無い事案も多く、犯情の幅が極めて広い犯罪類型であるといわれています。罪名だけでなく、事案や少年の特性を十分に考慮して、本当に逆送が適当であると言えるのか慎重に判断する運用がなされるべきであると考えます。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★