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死亡した父の借金を返済できない。どうしたら良いか。

相談内容

父が死亡したが,1000万円の借金と,少額の預貯金がある。相続すると借金も引き継ぐことになると聞いた。返せるお金はないが,どうしたら良いか。

結果

 人が亡くなると,法律で定められた相続人が被相続人(相続される人,すなわち亡くなった人のことです。)の資産も負債も全て相続する,というのが原則です。
 ただ,被相続人の負債が相続の対象となる財産よりも多い場合,家庭裁判所において相続放棄の手続きを執ることが考えられます。相続放棄をした場合,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなされますので(民法939条),被相続人の負債の支払義務を免れることになります。
 相続放棄の手続きを検討する場合には,特に以下の2点を気をつけなければなりません。
1つ目は,相続放棄は,被相続人が亡くなり,自分が相続人となった,ということを知った時から3ヶ月以内にしなければならない(民法915条),という点です。
この「知った時」については,判例で一定程度柔軟に解釈されていますが,基本的には期間を過ぎてしまうと,相続放棄ができなくなり,債務を相続することになってしまうため,注意が必要です。
ただ,この期間内に相続放棄をするか,そのまま相続するか決めかねるような場合には,家庭裁判所に期間の伸長を求めることが可能です(民法915条)。
2つ目は,相続放棄を考えている場合には,被相続人の資産を処分してはいけないということです。
被相続人の死亡後に被相続人の資産を処分すると,「法定単純承認」と言って,被相続人の相続財産について,相続することを認めたものと扱われ,相続放棄の手続きを取れなくなってしまうのです(民法921条)。
この処分には,債権を取り立てることも含まれるとする裁判例があるので(最判昭37.6.21),被相続人が誰かにお金を貸しているというような場合でも,相続放棄を考えている場合には,とにかく何もせず,相続放棄の手続きを粛々と行うことが肝要です。
なお,被相続人の資産及び負債の額が不明な場合には,限定承認といって,相続財産の限度で債務を清算するという手続きを取ることもできます(民法922条)。限定承認をした場合,債務を清算してなおプラスの財産が残った場合には,そのプラスの財産を相続することになります。ただし,限定承認は,相続人が数人いるときは,全員が共同してのみ,することができます(民法923号)。